日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
Frozen elephant trunk 術後遠隔期胸部下行大動脈合併症に対し治療を行った症例の検討
緑川 博文植野 恭平滝浪 学影山 理恵新妻 健菅野 恵
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 50 巻 3 号 p. 150-154

詳細
抄録

[はじめに]Frozen elephant trunk (FET) 後遠隔期胸部下行動脈 (descending thoracic aorta; dTA) 合併症に対し治療した症例を検討した.[対象および方法]2020年7月までの8例 (54~81歳,平均68歳,男性7例) を対象とした.瘤形態は真性5例,A型解離2例,真性+B型解離1例であった.FET deviceは当初home-madeによるMatsui-Kitamura stent device (MKS),現在はJ Graft Open Stent Graft (JGOSG) を使用した.[結果]手術成績:待機7例であり,MKS 5例,JGOSG 3例であった.全例手術成功し合併症なく生存退院した.合併症:MKSはdTA拡大2例,dTA拡大+migration 3例 (うち破裂1例),JGOSGはkinking+migration 1例,distal stent graft induced new entry (dSINE) 2例であり,FET施行後合併症発症までの期間はMKS平均70カ月,JGOSG平均14カ月であり,後者で早期に合併症を発症し,かつdSINEはすべて解離例であった.破裂をのぞく7例 (88%) に胸部ステントグラフト内挿術 (TEVAR) を追加施行した.[結語]今後臨床成績向上にはFET deviceは柔軟性と末梢側の過度な拡張力によらない圧着性が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2021 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top