2022 年 51 巻 1 号 p. 39-43
胸部大動脈瘤や大動脈解離に対する胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)は近年急速に普及してきており,現在は病変部位や病態によっては第一選択としても用いられているが,シースが比較的太く,大腿動脈や腹部大動脈などのアクセスルートでも使用できない症例も存在する.今回右総頸動脈からTEVARを施行した症例を経験したので報告する.症例1 : 86歳男性.約20年前に感染性腹部大動脈瘤,十二指腸穿破に対して腹部大動脈断端閉鎖,右腋窩-両側総大腿動脈バイパスを施行された.経過中に下行大動脈の嚢状瘤が拡大傾向にあった.腹部大動脈は断端となっており,腹部大動脈からのアプローチは困難であり,右総頸動脈をアクセスルートとしてTEVARを施行した.症例2 : 79歳女性.DeBakeyⅡ型急性大動脈解離で上行大動脈にUlcer-like projection(ULP)病変を認めた.全身状態不良で外科手術不能と判断されたが,ULP病変の拡大を認めたため,TEVARの方針とした.下行大動脈がshaggy aortaで腹部大動脈からのアクセスが困難であり,右総頸動脈をアクセスルートとし,上行大動脈にTEVARを施行した.アクセスルートが他にない症例に対する右総頸動脈アプローチのTEVARは有用な方法と考えられた.