日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
特発性血小板減少性紫斑病を合併した心筋梗塞に対して術前にデキサメサゾン大量療法を施行した冠動脈バイパス術の1治験例
杉本 聡山下 知剛安達 昭山内 英智
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2023 年 52 巻 1 号 p. 24-28

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抄録

特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)を合併した心臓手術は,周術期の免疫グロブリン大量静注療法や血小板輸血の有効性が報告されているが,その効果は一過性と考えられている.ITP初発例に対してデキサメサゾン大量療法は即効性と寛解が期待できるとの報告があるが,ITP合併心臓手術の周術期に用いられた報告はこれまでにない.今回われわれは,ITP合併心筋梗塞に対して術前にデキサメサゾン大量療法を施行した冠動脈バイパス術の1治験例を報告する.症例は70代,男性.ITPの既往あり.安静時胸苦で救急搬送され心筋梗塞と診断された.冠動脈造影で右冠動脈閉塞を含む3枝病変を認めたが,血小板数は4.9万/mm3と低値で,周術期の出血が危惧されたため責任病変の右冠動脈にPCIを先行した.ITPに対し免疫グロブリン大量療法とデキサメサゾン大量療法を施行し,血小板数が10.3万/mm3まで増加安定したところで,左冠動脈残存病変に対して冠動脈バイパス術を施行した.周術期に出血性合併症なく良好に経過した.ITPに対するデキサメサゾン大量療法は効果発現が早く,早期の手術介入が必要な症例において有効な選択肢の1つと考えられた.

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