2023 年 52 巻 1 号 p. 67-70
症例は76歳,女性.6年前肺門リンパ節腫脹を認めサルコイドーシスの診断となる.そのときのCT画像で無症候性のStanford A型大動脈解離像を認めていた.1年前の胸部レントゲンで明らかな心拡大を認めたため精査目的で心エコーを行ったところ高度大動脈弁閉鎖不全(AR)を認めた.造影CTで以前と同様の上行大動脈内の亀裂内膜と思われる所見を認めたため手術目的で当科紹介となった.経胸壁心エコーで左室拡張末期径(LVEDD)61 mmの心拡大とAR 3/4度を認め,造影CTで上行大動脈内のやや末梢に亀裂内膜と思われる幅3 mm程度の索状物様構造物(線状影)を認めたがエントリーや偽腔は明らかではなかった.上行大動脈内の構造物は通常の大動脈解離とは異なる印象であったが慢性大動脈解離ではあり得るものと判断し手術を施行した.術中所見ではCTで見られた線状影は解離ではなく内膜による索状物であり,これを切除するとともに生体弁による大動脈弁置換術(AVR)と上行大動脈人工血管置換術を行った.経過は良好で術後11日目に自宅退院となった.病理所見では索状物は血管内膜からなり炎症細胞浸潤は認めなかった.大動脈壁に解離はなく炎症性細胞浸潤も認めなかった.非常に稀な偽性大動脈解離の画像を示した大動脈内intimal bandの1例を経験した.術前に解離を完全に否定することは困難であり,また術前診断は確立しておらず大動脈解離に準じた準備が必要と考えられる.