2023 年 52 巻 6 号 p. i-iv
2021年冠血行再建に関する米国ガイドラインが報告された.左主幹部(LMT)病変におけるPCIとCABGのアウトカムの比較においては,EXCEL試験,NOBLE試験が主たるエビデンスとして引用されているが,特にEXCEL試験の周術期心筋梗塞(MI)の定義がプライマリーエンドポイントに影響しており,その設定のあり方,内容において疑義があがった.EXCEL試験においてはMIの定義としてProtocol Definitionとして米国心臓血管造影検査インターベンション学会(SCAI)の定義が用いられており,これは一般に認められているUniversal Definitionとは異なり,CABGでの周術期MIの頻度が高くなる傾向にある.NOBLE試験ではプライマリーアウトカムのMIの定義はnon-procedural MIとなっており,CABGにおける頻度が低くなる.また,2021米国ガイドラインは,安定型多枝病変の冠血行再建に対しては,ISCHEMIA試験の影響を強く受け,PCI,CABGともにIIbに引き下げられた.これに対しては日本も含めて世界の特に外科系学会からの疑義が強くあがっており,米国ガイドラインのその章に関してはその推奨度を認めない旨が各学会から論文で報告されている.