2024 年 53 巻 6 号 p. 333-338
症例は74歳,男性.近医にてクリオグロブリン血症血管炎の経過観察中,非細菌性心内膜炎を発症し抗免疫療法を受けた.1年3カ月後に,呼吸管理を要する心不全を発症した.心エコー図検査で大動脈弁尖の構造的破壊を伴った重度大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁疣贅,重度三尖弁閉鎖不全症が認められた.準緊急的に大動脈弁置換術,僧帽弁疣贅切除術,三尖弁形成術を施行した.クリオグロブリンは寒冷で凝集する性質を持ち血管炎症状を呈する免疫グロブリンである.低体温下体外循環使用時に塞栓症や回路閉塞などの危険性が想定されたため,術直前に血漿交換療法を施行した.術中は目標直腸温33℃とした体外循環を施行し,心筋保護は投与温度30℃の微温血液心筋保護液を投与した.人工心肺使用中のトラブルや術後微小塞栓症の合併は認められず,術後23日目に退院となった.