2025 年 54 巻 1 号 p. 14-17
症例は45歳男性.息切れ,動悸を主訴に近医を受診し,心電図異常を指摘された.冠動脈カテーテル検査を施行したところ,左前下行枝と右冠動脈に多発の特発性冠動脈解離(SCAD: spontaneous coronary artery dissection)を認めた.光干渉断層撮影では左冠動脈は2腔構造,右冠動脈は多数の解離腔を呈していた.心電図同期CTでは,壁運動低下を呈する左室心尖部に血栓を認めた.虚血により心機能も低下しており,手術適応として当院紹介となった.両側内胸動脈および橈骨動脈を用いた心拍動下での冠動脈バイパス術,および左室心尖部の血栓摘除術を施行した.吻合部の内腔は解離していたが,真腔と思われる部位へ吻合し,良好なflow patternを確認し得た.術後合併症を認めることなく経過し,術後22日目に退院となった.術後2.5年が経過し,グラフトの開存,心機能の改善を認めている.