1989 年 19 巻 2 号 p. 106-110
57歳女性の腎摘出後の単腎に発生した腎動脈瘤に対し,腎保護下にin situの動脈瘤切除と血行再建術を行い,良好な結果を得た.腎保護法としては高張細胞内液組成のユーロコリンズ液の間欠的還流と腎表面の局所冷却を行った.1987年までに本邦で報告された腎動脈瘤は219例であるが,単腎に発生した腎動脈瘤は非常に珍しく自験例を含め9例にすぎない.腎動脈瘤の手術適応については現在まで確固とした基準はないが,腎動脈瘤がいったん破裂すると,たとえ救命できてもそのほとんどが腎摘出術に終わっていることや,最近の腎保護法や血行再建術の進歩からすると,単腎者の腎動脈瘤は積極的に手術をしたほうがよいと考える.