抄録
僧帽弁狭窄 (MS) を合併した両大血管右室起始症 (DORV) の1手術例を経験したので報告する. 症例は2歳6か月男児で, 超音波検査にて僧帽弁輪径11mm, 僧帽弁口面積0.8cm2と狭窄を認めた. 手術では intraventricular rerouting およびRVOTR施行しMSは放置した. MSを伴ったDORVの報告例は過去20年間で21例 (剖検7例, 臨床14例) と比較的少ない. この21例をMSの形態により Ruckman らに従って分類すると, hypoplastic mitral valve 4例, parachute mitral valve 6例, parachute mitral valve+supramitral ring 3例, suramitral ring 3例, その他1例, 不明4例であり, 本症例のようなDORVに hypoplastic mitral valve を伴った症例報告は4例のみと希である. 今回われわれは, MSを放置し, 術後5か月の現在経過良好であるが, 今後注意深く経過観察を行う必要がある.