日本心臓血管外科学会雑誌
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25 巻, 5 号
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  • 川田 忠典, 舟木 成樹, 鎌田 聡, 小山 照幸, 宮本 成基, 菊地 慶太, 北中 陽介, 木村 加奈子, 武井 裕, 山手 昇
    1996 年 25 巻 5 号 p. 279-284
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離の早期診断, 早期外科治療が可能になるにつれて大動脈基部外膜破裂, 冠動脈解離腔内断裂などの大動脈基部破壊例あるいは冠動脈解離による冠血行不全併発例に遭遇する機会が増加している. このような病変は大動脈造影検査が診断的であるが, 近年, 非侵襲的検査法によって診断が確定されたならば大動脈造影は除外される傾向にある. したがって, 初期診断上, もっとも利用度の高い造影CTにてこれらの病変を予知することは重要である. そこで, 49例の大動脈解離例の造影CT上の諸所見と大動脈造影像および術中所見から得られた所見とを比較した. 大動脈基部に intimal flap 像が同定しえた6例中4例 (66.7%), 大動脈基部径35mm以上でAAE例を除いた14例中2例 (14.3%) に大動脈基部再建あるいはCABGを要するような大動脈基部破壊例が含まれた. 大動脈基部破壊9例中8例は基部径40mm以上で有意に高値であった. 以上より, 造影CT上の大動脈基部内隔壁同定, 基部径の40mm以上の拡大所見は大動脈基部破壊を伴う基部病変合併例を示唆する重要所見であると結論した.
  • 長谷川 豊, 石川 進, 大滝 章男, 高橋 徹, 市川 秀昭, 佐藤 泰史, 小谷野 哲也, 鈴木 政夫, 高尾 昌明, 森下 靖雄
    1996 年 25 巻 5 号 p. 285-289
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    50歳以上の心房中隔欠損症 (ASD) 38例を術前の肺動脈収縮期圧 (PAP) により3群にわけて肺高血圧の程度と臨床症状, 術前後の血行動態および遠隔成績について比較検討した. 術前状態ではPAPの上昇に伴い, Pp/Ps, Rp/Rsは高値を示し, 心胸郭比の拡大, PaO2の低下, 心房細動の合併, NYHA II度以上の心不全も高率にみられた. 左-右短絡率・Qp/Qsと肺動脈圧との間には相関がなかった. PAP 50mmHg以上の肺高血圧症例は8例 (21%) であったが, いずれもPAPは70mmHg以下であり, Rp/Rsも0.30以下で, 肺高血圧および肺血管閉塞性病変の進行は高度ではなかった. 術後はPAP・Rp/Rsは全群で低下しており, 心拡大・心不全症状も改善した. 高齢者ASDに伴う肺高血圧は high flow による場合が多く, ASDの閉鎖により症状の改善が期待できるため積極的な手術が望まれる.
  • 佐戸川 弘之, 星野 俊一, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 緑川 博文, 高瀬 信弥, 小川 智弘
    1996 年 25 巻 5 号 p. 290-294
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    教室にて外科治療を施行した下肢の慢性静脈不全症例103例174肢を, 皮膚症状を有する51肢 (C4~6) と有さない123肢 (C2,3群) とし, 術前の下肢の血流状態と外科治療成績について比較検討した. 脈波上, C4~6群はC2,3群に比し, 最大静脈還流量は高値, 再充満時間は有意に短縮していた(p<0.05). Duplex scanning では, C4~6群はほとんどの例で大伏在静脈に逆流を有しており, その逆流速度, 逆流量はC2,3群の大伏在静脈の逆流例に比べ有意に高値を示した (p<0.05~0.01). C4~6群は, 深部静脈に逆流を伴うものが45%を占め, 23肢に深部静脈の内視鏡下弁形成術を施行したが, 平均22か月の遠隔において症状再発例は見られていない. 静脈鬱滞症状を呈する静脈不全では, 逆流病変が深部静脈を含め複数病変に及び, 表在性静脈の逆流の確実な遮断, 深部静脈の弁形成を含めた多分節的な逆流遮断手技が必要と考えられた.
  • 関口 昭彦, 島田 宗洋, 永峯 哲弘
    1996 年 25 巻 5 号 p. 295-299
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    姑息的右室流出路再建術における流出路径の設定には従来明快な基準が示されていない. そこで本術式を施行した17例で, この点に関して検討した. 疾患はファロー四徴症 (TOF) 7例, TOF兼肺動脈閉鎖8例, TOF兼完全型心内膜床欠損1例, 両大血管右室起始兼肺動脈狭窄1例であった. 術式は弁論を越えるパッチ7例, 心外道管5例, 弁輪を越えないパッチ3例, その他2例. 再建流出路径の正常弁輪径に対する比率は平均0.91, 術前後のPAIの比で表した肺動脈成長率は平均2.14であった. 流出路径の正常径に対する比率と肺動脈成長率との間, および術後Pp/Psと肺動脈成長率との間には有意な相関はなかった. しかし流出路径が正常径の9割を越えた症例では有意に術後Pp/Psが高値を呈した. 一期的根治を行ったTOF9例の流出路径の正常弁輪径に対する比率は平均0.59であった. 以上より本術式における流出路径の指標は正常弁輪径の6割から8割が妥当と考えられた.
  • 大嶋 義博, 山口 眞弘, 大橋 秀隆, 今井 雅尚, 熊本 隆之, 尾崎 喜就, 細川 裕平
    1996 年 25 巻 5 号 p. 300-306
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1985年以降, 広義の Taussig-Bing 奇形に対し, 連続して行われた根治手術症例12例を対象とした. 全例 {S, D, D} で, 肺動脈狭窄の合併はなく, 並列大血管関係は1例のみであった. いずれも動脈スイッチ手術が行われ, 並列型の1例のみ Jatene 原法を用いたが, 他はすべて Lecompte 法を行った. 手術時月齢は8~42 (平均21) か月で, TGA型9例, DORV型3例であった. 合併奇形は, CoA6 (うち4例は弓部低形成, IAA1, 僧帽弁 straddling 1, subaortic stenosis 2であった.) 先行手術として, 肺動脈絞扼術 (PAB) が11例に, PABと同時あるいは前後して動脈管結紮1, Blalock-Hanlon 手術3, carotid flap 法3, subclavian flap 法2, extended aortic arch anastomosis 2が行われた. 病院死は1例で, 剖検で上腸間膜動脈血栓が死因と判明した. 生存11例における根治術後追跡期間は0.6~9.4 (平均5.8) 年, 遠隔死は side by side 型の1例で, 剖検にて左冠動脈領域を中心とした広範な心筋梗塞巣がみられた. 動脈スイッチ手術の導入, 二期的手術の方針で, TGA型に対する手術成績は良好であったが, side by side 例に対する術式に問題が残った.
  • 椎谷 紀彦, 松居 喜郎, 宮嵜 直樹, 村下 十志文, 佐々木 重幸, 佐久間 まこと, 安田 慶秀
    1996 年 25 巻 5 号 p. 307-309
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常を伴った DeBakey I型慢性解離性大動脈瘤に対し, 選択的脳灌流下に上行・弓部大動脈置換術を施行し胸部下行大動脈解離腔の完全消失の得られた1治験例を報告した. 患者は57歳, 女性. 胸背部痛を主訴として来院した. 右鎖骨下動脈は下行大動脈から起始していた. 半周以上解離した弓部から近位下行大動脈の解離腔を切除・閉鎖し, 上行大動脈グラフトを斜めにトリミングして長い舌状として再建した. 術後経過は良好で, 4年後の現在通常の社会生活を送っている. 両者合併例に対する大動脈弓部再建例は稀であり, 術式上の工夫につき報告した.
  • 辻 和宏, 中井 幹三, 紀 幸一, 佐野 俊二
    1996 年 25 巻 5 号 p. 310-313
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性. 幼児期より心疾患を指摘されていたが放置していた. 検診時に心雑音, 高血圧症を指摘され, UCGにてASDと診断された. さらにCAGにて左冠動脈-肺動脈瘻の合併も認められた. 手術は, 体外循環下に心房中隔欠損直接縫合閉鎖, 瘻血管結紮および肺動脈幹内より瘻開口部の縫合閉鎖術を施行し, 良好な結果を得た. 冠動脈-肺動脈瘻の手術に関しては, 心外膜側での瘻血管の結紮に加え, 肺動脈内からの瘻開口部の確実な縫合閉鎖が望ましいと考える.
  • 野地 智, 北村 信夫, 山口 明満, 三木 太一, 春藤 啓介, 木村 俊一
    1996 年 25 巻 5 号 p. 314-317
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性. 初回手術時 (14年前), 僧帽弁閉鎖不全を合併した特発性肥厚性大動脈弁下狭窄症 (IHSS) と診断され, 生体弁による僧帽弁置換術が施行され, 術後経過は良好であった. 術後10年目より徐々に三尖弁閉鎖不全 (TR) に伴う右心不全が出現した. さらに術後14年目には, 心室中隔肥厚による両心室腔の狭小化とTRが原因となり両心不全に陥ったため再手術 (僧帽弁および三尖弁置換術) を施行した. 手術所見では心臓全体は極度に変形し, 両心室腔は狭小化していた. 術後右心不全の遷延から多臓器不全を併発し, 術後47日目に失った. 剖検所見では心室中隔の著明な肥厚(24mm) を認めた. 本症例では術後10年以降から心室中隔肥厚が再度進行しており, HOCMに対する僧帽弁置換術をはじめとする種々の術式の適応を今一度考え直させる興味深い症例と考えられた.
  • 石黒 真吾, 黒田 弘明, 原 陽一, 芦田 泰之, 井上 明彦, 森 透
    1996 年 25 巻 5 号 p. 318-320
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は前胸部外傷の既往のある54歳男性で, 心不全にて精査したところ, 心前面から下面の辺縁に石灰化を伴う腫瘤陰影が認められ, 右室圧波形は dip and plateau を示した. 開胸すると心嚢膜と心外膜が肥厚石灰化し, その間隙に器質化血腫が充満していた. 体外循環下には心膜部分切除と血腫除去を行い, 心不全は軽快した. 外傷後血腫による圧迫と限局性の収縮性心膜炎により右心系の拡張障害をきたした希な症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 井上 仁人, 福田 豊紀, 鈴木 孝明, 秋 顕
    1996 年 25 巻 5 号 p. 321-324
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄 (MS) を合併した両大血管右室起始症 (DORV) の1手術例を経験したので報告する. 症例は2歳6か月男児で, 超音波検査にて僧帽弁輪径11mm, 僧帽弁口面積0.8cm2と狭窄を認めた. 手術では intraventricular rerouting およびRVOTR施行しMSは放置した. MSを伴ったDORVの報告例は過去20年間で21例 (剖検7例, 臨床14例) と比較的少ない. この21例をMSの形態により Ruckman らに従って分類すると, hypoplastic mitral valve 4例, parachute mitral valve 6例, parachute mitral valve+supramitral ring 3例, suramitral ring 3例, その他1例, 不明4例であり, 本症例のようなDORVに hypoplastic mitral valve を伴った症例報告は4例のみと希である. 今回われわれは, MSを放置し, 術後5か月の現在経過良好であるが, 今後注意深く経過観察を行う必要がある.
  • 鈴木 憲, 谷口 和博, 門場 啓司, 宮本 裕治, 松田 暉
    1996 年 25 巻 5 号 p. 325-328
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は大動脈炎症候群に伴う頸動脈高度閉塞性病変と大動脈弁閉鎖不全を合併した29歳女性である. 血管造影により左鎖骨下および左総頸動脈の閉塞と右総頸動脈の高度狭窄が認められた. しかし右椎骨動脈からの側副血行よりすべての頭蓋内主要血管が描出され, 経頭蓋 Doppler 法および脳血流シンチグラフィーでは脳血流は正常であった. このため頸動脈再建は行わず大動脈弁置換術のみを施行した. 手術は経頭蓋 Doppler 法による左中大脳動脈血流速度のモニター下に, 中等度低体温下拍動流体外循環で平均体血圧60mmHg, 左中大脳動脈血流速度90%を維持して行い, 脳合併症は認めなかった. 頸動脈に高度閉塞性病変を有する症例に対し開心術と同時に頸動脈血行再建を施行するか否かに関しては議論があるが, 術前検査および術中管理を慎重に行えば同時手術を回避して開心術のみを行う方法も有用であると考えられた.
  • 植松 正久, 山口 眞弘, 大橋 秀隆, 今井 雅尚, 大嶋 義博, 安宅 啓二, 芳村 直樹
    1996 年 25 巻 5 号 p. 329-332
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    5歳男児の三尖弁閉鎖症に対し, Björk 手術を行ったが, 術後37日目に, 右房内血栓形成から左肺動脈血栓塞栓症をきたして死亡した症例を経験した. Björk 手術は Fontan 型手術のうち, 肺動脈弁を温存し, 低形成の右室を pumping chamber として利用する術式であるが, 右房-右室吻合部での乱流発生や同部が低圧系であることから生ずる血流うっ滞により, 血栓を形成する危険性があるものと考えられた. Björk 手術の術後には, 心エコーによる厳重なフォローと抗凝固療法の必要性が示唆された.
  • 華山 直二, 酒井 章, 服部 隆司, 阿部 正一, 黒山 直樹, 林 宗博, 大澤 幹夫
    1996 年 25 巻 5 号 p. 333-336
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1962年7月当院開設より1995年1月までの間に, 開心術後に高浸透圧性非ケトン性昏睡 (hyperosmolar hyperglycemic non-ketotic diabetic coma: 以下HHNKDC) を合併した症例を3例経験した. 当施設における後天性心疾患開心術後のHHNKDCの発症率は0.3%であった. この3例はすべて僧帽弁疾患を含む症例であった. 死亡例は1例 (33.3%) であった. 開心術後に発症するHHNKDCの発生頻度は少ないが本症はいったん発症すればの死亡率は高率である. 当施設で経験した開心術後のHHNKDC 3例を提示するとともに若干の考察を加えた.
  • 田畑 隆文, 三木 成仁, 上田 裕一, 荻野 均, 森岡 浩一, 酒井 哲郎, 松山 克彦, 松林 景二, 野本 卓也
    1996 年 25 巻 5 号 p. 337-339
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の女性で腎動脈下腹部大動脈瘤の破裂で緊急手術を行った. 左鎖骨下動脈からバルーンを挿入したが, 遊離した大動脈弓部の粥腫のためと思われる脳塞栓をきたした. 血行動態の不安定な破裂性腹部大動脈瘤の手術にバルーンの果たす役割は大きいが, その使用にあたっては脳塞栓の可能性を念頭におき操作する必要があると考え報告した.
  • 宮城 和史, 古謝 景春, 国吉 幸男, 赤崎 満, 下地 光好, 久高 学, 上江洲 徹, 佐久田 斉, 鎌田 義彦, 草場 昭
    1996 年 25 巻 5 号 p. 340-343
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Budd-Chiari 症候群に対する外科治療は, 各種バイパス手術や直達手術などが行われているが, 手術成績や遠隔期予後に問題を残し, その術式選択をめぐって議論が多い. 今回, 9年前に行われた下大静脈-右心房バイパス術後に早期グラフト閉塞をきたした1例に対し, われわれの直達手術による再手術を施行し良好な結果を得た. 肝静脈流出路閉塞を本態とする Budd-Chiari 症候群では, 肝静脈の再開通を得ることが肝要であり, かかる観点からわれわれの直達手術は有用な術式である.
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