抄録
症例は19歳の女性. 6歳のとき, 大動脈縮窄症, 圧較差40mmHgと診断, 以後経過観察されていた. 今回, 手術適応の再検討のため紹介された. 左右上肢血圧差20mmHg, 右上肢下肢血圧差40mmHgを認めた. カテーテル検査では左総頸動脈より末梢の遠位大動脈弓~下行大動脈間に多房性 saccular type の瘤を認め, また瘤と下行大動脈間に縮窄部を認めた. 手術所見: 多房性 saccular type の瘤を認め, 瘤壁はきわめて薄く, 瘤内の血流は透視可能で, きわめて破裂の危険の高い症例であった. また内膜の肥厚と菲薄化を認め, 瘤と下行大動脈間に縮窄部を認めた. 直径16mmの人工血管を用いて, 遠位大動脈弓~胸部下行大動脈間を再建し, さらに8mmの人工血管を用いて左鎖骨下動脈を再建した. 本症の自然経過では, 瘤破裂が認められ, 放置すれば予後不良な疾患であり, 積極的な外科治療が必要と考えられた.