抄録
腹部大動脈置換術後,非常に希な合併症である乳糜貯留を認め,外科的治療で治癒しえたので報告する.症例は70歳男性.最大径5cmの腎動脈下腹部大動脈瘤に対して,左後腹膜アプローチによる人工血管置換術を施行した.術後17日目より腹部膨満感と発熱が出現し,CTにて後腹膜腔に液体の貯留を認めたため,経皮的ドレナージ術を施行した.細菌培養が陰性で,脂肪滴が存在する乳白色の排液を得たため,乳糜貯留と診断した.絶食,IVH,ドレナージの保存的療法で加療したが,排液の減少が認められないため,リンパ管結紮術を施行した.術直後より乳糜は完全に消失し,軽快退院した.