抄録
真性大動脈瘤に合併した急性大動脈解離は比較的希であるといわれているが,そのなかでも解離と真性瘤とが同一部位に存在するものは破裂の危険性が高くもっとも予後不良といわれている.一般的に動脈硬化の重症化と解離とは逆の関係であるといわれ,大動脈解離の伸展はplaqueにより退化した中膜で中断されることが多い.症例は65歳男性で突然の背部痛を主訴に来院.CTにて急性Stanford B型大動脈解離と直径55mmの真性腹部大動脈瘤を認めた.解離腔は腹部動脈瘤を越えて伸展しており下肢虚血と溶血を引き起こしていた.解離腔はほぼ血栓閉塞していたため緊急で腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を施行し良好な結果を得た.