日本心臓血管外科学会雑誌
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31 巻, 3 号
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  • Prostaglandin E1投与の意義
    芝野 竜一, 黒岩 中, 田代 忠, 木村 道生
    2002 年 31 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Prostaglandin E1 (PGE1)使用による心臓手術時の免疫機能の推移について,体外循環中や体外循環後での白血球表面抗原(CD3,CD20,CD4,CD8,CD16,CD11b,CD62L)の発現率,好中球貪食機能を測定した.体外循環後の好中球接着分子CD11bの発現や,好中球貪食機能にPG投与による有意差はなかったが,PGE1投与群は好中球の血管内皮細胞との接着に関するCD62L抗原発現が有意に減少した.さらにTリンパ球抗原のCD3,そのサブセットであるCD4,あるいはCD8発現細胞が減少した.対照薬として使用したアムリノン投与群ではPGE1投与群ほどの大きな影響はみられなかった.これらの結果から体外循環時のPGE1は全般的な免疫系細胞の抑制へと働く可能性が推察された.
  • 山村 光弘, 宮本 巍, 八百 英樹
    2002 年 31 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    われわれは,TNF-α産生阻害剤であるFR-167653(Fujisawa Pharm. Co., Ltd., Osaka)の,ラットinterposition vein graftモデルにおける術後内膜肥厚の抑制効果の有無について検討した.顕微鏡手術下にLewisラット(雄,480±8g)の総大腿動脈に腹壁静脈グラフトを端々吻合した.手術開始直前,腹腔内にFR-1676532.0μg/gを投与した群(FR群,n=5)と,同量の生理食塩水を投与した群(C群,n=6)の2群について,術後内膜肥厚の程度を比較検討した.術後4週目に腹壁静脈グラフトを採取し,コンピュータ画像処理(NIH Image Ver. 1.61)により内膜断面積を測定した.C群の術後内膜断面積は0.434±0.045mm2であったのに対し,FR群は0.160±0.057mm2で,有意に低値を示した(p<0.01).本研究によって,TNF-α産生阻害剤であるFR-167653が,ラットinterposition vein graftモデルにおいて術後内膜肥厚を抑制する可能性が示唆された.
  • 池淵 正彦, 田部 俊比古, 黒田 弘明, 小野 公誉
    2002 年 31 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大動脈-大腿動脈バイパス術41例54肢(AF群),大腿-大腿交叉バイパス術26例26肢(FF群),腋窩-大腿動脈バイパス術6例7肢(AxF群),大腿-膝上膝窩動脈バイパス術37例39肢(FP群)の遠隔成績を検討した.AF群に比し,FF群では有意に高齢で,AxF群,FF群ではFontaine III, IV度の割合が有意に多く,術前ABIも有意に低かった.5年1次開存率はAF群94.7%,FF群91.3%,FP群64.3%であったが,FP群では跛行症例では82.5%で,救肢症例では43.3%であった.5年2次開存率はAF群94.6%,FF群91.3%,FP群83.3%であった.グラフト閉塞症例は全例が男性で喫煙歴を有していたほか,血栓傾向やrun off不良,術後薬物療法の不徹底が関係していた.グラフト閉塞患者12例のうち2例で下肢切断となり,手術例全例の肢切断回避率は98.4%であった.
  • SJM弁との比較
    神野 禎次, 多胡 護, 吉田 英生, 山根 正隆
    2002 年 31 巻 3 号 p. 183-186
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ATS弁による大動脈弁置換術の成績をSJM弁と比較し,その有用性を検討した.過去5年間に大動脈弁置換術(単弁)を施行し,術後12ヵ月以上の期間にわたり心エコーにて左室機能を検討できたATS弁群23例とSJM弁群16例を対象とした.これらの症例をAS,AR,ASR群に分け,LVDdI,LVDsI,%FS,LVMIおよび最大人工弁圧較差(PG)を計測し,溶血の指標としてLDHと遊離ヘモグロビンを測定した.LVDdI,LVDsI,LVMIはATS,SJM両群間に差はみられなかったが,%FSはAS群においてATS群で高値をとった.PGは各群の各サイズ間で有意差はみられなかった.術後LDH,遊離ヘモグロビンはATS群で有意に低値をとった.術後の左心機能,LVMIの改善においてATS弁は満足のいく成績を示したが,PGに関しての優位性はみられなかった.人工弁による溶血は,ATS弁群にて有意に軽減されることが判明した.
  • 石川 和徳, 星野 俊一, 緑川 博文, 小川 智弘, 佐藤 晃一
    2002 年 31 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    胸痛を契機に発見された,希な先天性心疾患である冠動脈肺動脈瘻に対し肺動脈内腔側からの瘻孔閉鎖術を施行したので報告する.症例は51歳,女性.労作時前胸部痛の精査のため施行された冠動脈造影検査にて,左前下行枝と回旋枝から起始し,肺動脈本幹に流入する冠動脈肺動脈瘻を認めた.左右短絡量は5.8%と少量であったが,瘻孔以下の冠動脈造影が不良であったことから,胸痛は冠動脈肺動脈瘻により心筋虚血が発生した可能性が高いと判断し手術適応とした.完全体外循環心拍動下に肺動脈を縦切開し,内腔側に確認された二つの瘻開口部を直接縫合閉鎖した.術後経過は良好であり,胸痛の再発は認めなかった.術後冠動脈造影上,肺動脈への流入こそ認めなかったが,冠動脈肺動脈瘻は全体にわたり造影された.より確実な瘻孔閉鎖と瘻への血流遮断のためには,さらに瘻結紮術を行うべきであった.
  • 宮崎 明子, 橘 球, 池淵 正彦, 殿本 詠久, 応儀 成二
    2002 年 31 巻 3 号 p. 191-193
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性である.吐下血を主訴に来院した.7年前に腹部大動脈瘤にて人工血管置換術を受けていた.臨床症状より吻合部瘤に発生した大動脈腸管瘻を疑い,造影CTにて診断した.人工血管の感染は否定できなかったので,腋窩-大腿動脈バイパス術を先行させたのち,Y-グラフトを除去し断端閉鎖を行い,良好な結果を得た.
  • 宮本 伸二, 岩田 英理子, 穴井 博文, 迫 秀則, 濱本 浩嗣, 重光 修, 葉玉 哲生
    2002 年 31 巻 3 号 p. 194-197
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で,3ヵ月に及ぶ不明熱と腰痛ののち,腰背部痛が増悪しCTにより他院で腹部大動脈瘤破裂と診断され緊急入院した.入院直後のCT撮影中後腹膜腔切迫破裂から腹腔内破裂に移行し,緊急手術となった.腹腔内に大量の血液を認めたが,嚢状動脈瘤周囲に膿瘍形成は確認されなかった.動脈瘤壁,血栓を可及的に切除,洗浄後Y字人工血管にてin situに再建を行った.瘤壁からSalmonellaが検出され,術後同菌による腹壁膿瘍を形成したが抗生物質の全身および局所投与で治癒し,術後45日に退院した.感染性動脈瘤の腹腔内破裂は非常にまれである.
  • 堀家 一哉, 深田 義夫, 加納 正志, 来島 敦史
    2002 年 31 巻 3 号 p. 198-201
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    僧帽弁形成術後に人工腱索に発症したと考えられる感染性心内膜炎の再発例を経験した.症例は36歳,男性.1998年12月感染性心内膜炎,僧帽弁前尖の腱索断裂による4度の僧帽弁逆流と診断され約2ヵ月の内科的治療ののちに人工腱索を使用した僧帽弁形成術を行い良好に経過していた.2000年2月感冒様症状を契機として僧帽弁前尖に疣贅の形成を伴った感染性心内膜炎を再発し,疣贅の塞栓による脳梗塞を併発するなど急性に増悪を示した.感染は化学療法にて鎮静化したが,弁破壊による僧帽弁逆流が出現し再手術を施行した.初回手術時人工腱索を縫着していた前尖の部位に強い炎症所見と穿孔を認めた.炎症が広範囲であったため人工弁置換術を行った.感染性心内膜炎では,起炎菌の同定や抗生剤の有効性,脳合併症の有無,弁や支持組織の破壊進行の程度などが治療方針の決定および予後の改善に大きく影響する.また本症例では基礎疾患に免疫機能不全の存在も疑われた.
  • 大内 真吾, 岡 隆紀, 金 一, 大津 修, 小山 耕太郎, 泉本 浩史, 石原 和明, 川副 浩平
    2002 年 31 巻 3 号 p. 202-204
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は1歳3ヵ月,女児,Down症候群.生後1日目に心雑音を指摘され,心エコー上,Fallot四徴症(TOF),僧帽弁閉鎖不全症(MR)と診断されていた.心不全,チアノーゼを認めず経過観察されていたが,乳児期後半より体重増加が不良で,1歳頃よりMRの増悪による心不全のため外科治療目的で当センターに入院した.術中所見では心房中隔欠損はなく,流入部より膜様部を越え漏斗部へ前方進展する心室中隔欠損を認め,房室弁は同一平面上にあり,心室中隔流入部はscoopingしていた.術中所見より一次孔欠損のない心内膜床欠損症(ECD)とTOFの合併例と診断した.経右房肺動脈的に心内を修復し,術後17病日に合併症なく退院した.一次孔欠損のないECDとTOFの合併例はきわめて希であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 向井 省吾, 川上 恭司, 末田 泰二郎
    2002 年 31 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    末期の非虚血性心筋症に対する左室部分切除術(PLV)の遠隔期において,致死的不整脈の管理は重要な因子である.今回PLV術後に植え込み型除細動器(ICD)により遠隔期の突然死を免れた症例を報告する.症例は36歳の男性で,僧帽弁逆流I度と重度の三尖弁逆流を合併した拡張相肥大型心筋症であった.常温体外循環・心拍動下に三尖弁輪縫縮,PLV,僧帽弁置換術を行った.術後早期から難治性の致死的不整脈を発症したため術後3日目にICDを植え込んだ.退院後腎不全の増悪を契機に致死的不整脈が再発したが,ICDにより不整脈死を免れ,血液透析を導入し不整脈は消退した.ICDは,致死的不整脈の危険性を有する患者において薬物療法に比して心臓突然死の再発率を有意に低下させる.本報告は,ICDの予防的植え込み術の適応を妥当とするものではないが,PLV術後の難治性致死的不整脈に対して適応が考慮される症例があると思われる.
  • 本邦弁形成術報告例の検討
    大澤 久慶, 高木 伸之, 杉本 智, 安倍 十三夫
    2002 年 31 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性,21歳時,オートバイ走行中に転倒し全身打撲で入院した既往がある.その後は著患なく経過していたが,1999年4月頃より全身倦怠を自覚し近医を受診したところ心陰影の拡大を指摘された.心臓エコー検査を行ったところ高度な三尖弁閉鎖不全症を認めたため当科へ紹介となった.手術所見では,三尖弁前尖の亀裂と前尖に付着する腱索の断裂,弁輪拡大を認めたため,弁尖亀裂部は直接縫合を,断裂した腱索に対しては人工腱索による再建を,弁輪の拡大に対してはリングによる弁輪形成術をそれぞれ行った.術後三尖弁の逆流は完全に消失した.本邦で行われた外傷性三尖弁閉鎖不全症に対する手術報告例についてまとめ,なかでもとくに最近さかんに行われている弁形成術について考察を加え報告する.
  • 伊藤 篤志, 石野 幸三, 河田 政明, 加藤 源太郎, 浅井 友浩, 大島 祐, 増田 善逸, 佐野 俊二
    2002 年 31 巻 3 号 p. 214-216
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は2ヵ月,男児.左心低形成症候群の第二期再建術である両方向性Glenn吻合術後にMRSA縦隔洞炎を合併.再開胸し3本のドレーンを挿入,皮膚のみを閉創し,イソジン加生食を用いて,20~40ml/hで持続灌流を開始した.7日目に胸骨を閉じ,21日目に持続灌流を終了した.4日後に人工呼吸器より離脱.退院後は感染の再燃所見を認めず,発育良好でFontan手術待機中である.
  • 福田 宏嗣, 宮本 裕治, 高見 宏, 酒井 敬, 大西 健二
    2002 年 31 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    急性A型大動脈解離手術後の再手術2例を経験した.症例1は7年前inclusion techniqueで上行弓部大動脈置換施行.今回吻合部からの仮性大動脈瘤のため再手術を施行.各吻合部からのleak 3ヵ所をそれぞれ直接閉鎖した.症例2は5年前上行大動脈置換施行.弓部から胸部下行大動脈の遺残解離が拡大し再手術施行.まず左側方開胸で胸部下行大動脈を置換,術後74日目に二期手術として弓部大動脈置換を施行した.初回手術時の遮断部位に新たなentryを形成したものと考えられた.いずれの手術も周到な手術計画と超低体温循環停止法を補助手段に用い合併症もなく良好な結果が得られた.また初回手術時,再手術を予防するよう大動脈鉗子を用いないopen distal anastomosisや断端を完全離断し断端形成したのち吻合を行うべきと考えられた.
  • 生田 剛士, 末広 茂文, 柴田 利彦, 佐々木 康之, 平居 秀和, 村上 忠弘, 細野 光治, 藤井 弘通, 青山 孝信, 木下 博明
    2002 年 31 巻 3 号 p. 221-223
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    胸部鈍性外傷後の心室中隔穿孔に対して急性期に手術を行い救命しえたので報告する.症例は25歳,男性.バイク事故による胸部鈍性外傷にて緊急入院となった.入院時には心雑音を聴取しなかったが,受傷2日後に胸骨左縁に汎収縮期雑音を聴取するようになった.心エコー検査で左室-右室短絡を認め,外傷性心室中隔穿孔と診断した.肺挫傷による気道内出血を合併していたため血行動態の許す限り手術待機とした.肺対体血流量比が4.6と上昇してきたため,受傷後8日目に手術を施行した.術中心表面からの超音波検査にて穿孔部を確認し,右室切開にて到達した.心尖部寄りの筋性中隔部に4cmの亀裂を認めパッチ閉鎖した.術後一時的に右心不全症状を呈した以外は著変なく経過した.遺残短絡は認められず良好な結果が得られた.
  • 桑田 俊之, 多林 伸起, 川田 哲嗣, 阿部 毅寿, 上田 高士, 谷口 繁樹
    2002 年 31 巻 3 号 p. 224-226
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈置換術後,非常に希な合併症である乳糜貯留を認め,外科的治療で治癒しえたので報告する.症例は70歳男性.最大径5cmの腎動脈下腹部大動脈瘤に対して,左後腹膜アプローチによる人工血管置換術を施行した.術後17日目より腹部膨満感と発熱が出現し,CTにて後腹膜腔に液体の貯留を認めたため,経皮的ドレナージ術を施行した.細菌培養が陰性で,脂肪滴が存在する乳白色の排液を得たため,乳糜貯留と診断した.絶食,IVH,ドレナージの保存的療法で加療したが,排液の減少が認められないため,リンパ管結紮術を施行した.術直後より乳糜は完全に消失し,軽快退院した.
  • 末永 悦郎, 力武 一久, 白石 良, 伊藤 翼
    2002 年 31 巻 3 号 p. 227-229
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    真性大動脈瘤に合併した急性大動脈解離は比較的希であるといわれているが,そのなかでも解離と真性瘤とが同一部位に存在するものは破裂の危険性が高くもっとも予後不良といわれている.一般的に動脈硬化の重症化と解離とは逆の関係であるといわれ,大動脈解離の伸展はplaqueにより退化した中膜で中断されることが多い.症例は65歳男性で突然の背部痛を主訴に来院.CTにて急性Stanford B型大動脈解離と直径55mmの真性腹部大動脈瘤を認めた.解離腔は腹部動脈瘤を越えて伸展しており下肢虚血と溶血を引き起こしていた.解離腔はほぼ血栓閉塞していたため緊急で腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を施行し良好な結果を得た.
  • 山根 健太郎, 柴田 隆一郎, 久田 洋一
    2002 年 31 巻 3 号 p. 230-232
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    先天性大動脈二尖弁を伴ったバルサルバ洞動脈瘤破裂の1例に対し手術を行い,良好な結果を得たので文献的考察を加え自験例を報告する.症例は50歳の女性で,比較的急速に出現した心不全症状の精査目的に入院.動脈瘤は大動脈二尖弁の前バルサルバ洞より発生し右室流出路へ破裂していた.破裂部位は大動脈側から直接縫合閉鎖を行った.術前より合併していた心エコー上2度の大動脈弁閉鎖不全に対しては,大動脈弁の石灰化,弁尖自由縁の肥厚短縮が強く,弁置換術を行う必要があった.その治療にさいしては術後に大動脈弁閉鎖不全を残さない点が,遠隔期の良好な成績を得るために重要である.
  • 吉戒 勝, 濱田 正勝, 村山 順一, 蒲原 啓司, 久松 泰
    2002 年 31 巻 3 号 p. 233-235
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.左内頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術(carotid enaarterectomy: CEA)を先行させ,二期的に開心術を行った.大動脈造影CTおよび術中の大動脈超音波検査にて上行大動脈に高度の動脈硬化性病変を認めた.体外循環の送血を右腋窩動脈に吻合した人工血管より行い,中等度低体温,心室細動下に僧帽弁形成術と冠動脈バイパス術を施行した.脳合併症を併発することなく術後経過は順調であった.上行大動脈高度動脈硬化性病変を有する症例に対し僧帽弁手術を行うさい,腋窩動脈送血による体外循環,心室細動下での手術操作は,脳合併症を回避するために有効である.本方法の有用性,問題点に関し考察を加え報告する.
  • 吉田 昌弘, 山岸 正明, 山田 義明, 藤原 克次, 福本 淳, 春籐 啓介, 北村 信夫
    2002 年 31 巻 3 号 p. 236-238
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は7年前に当院でラステリ手術(Carpentier-Edwards 14mm弁付きグラフト)および左肺動脈形成術を受けた心室中隔欠損および肺動脈閉鎖の11歳男児.術後7年目の心臓カテーテル検査にてグラフトの狭窄と左肺動脈高度狭窄を認めた.左肺動脈は最狭部2mmしかなかったが,周囲を十分に剥離し,内膜を切開することにより10mmの肺動脈口径を確保し,周囲の癒着組織に縫合線をおき,ePTFE弁付きウシ心膜パッチを縫着した.術後経過は良好.術後3-D CTにて9mmの左肺動脈の開存を確認した.高度に狭窄した肺動脈であっても十分な剥離ののち周囲癒着組織を利用した形成術が有効であった.
  • 深田 靖久, 青木 秀俊, 大場 淳一, 吉田 俊人, 滝上 剛, 伊藤 昌理, 若松 豊, 安田 慶秀
    2002 年 31 巻 3 号 p. 239-241
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.僧帽弁閉鎖不全症に対し後尖矩形切除およびCosgrove-Edwards ringによるring annuloplastyを施行した9日後より溶血性貧血を生じた.心エコー図検査にて遺残逆流のjetがannuloplasty ringに衝突している所見を認めた.保存的治療を行ったが奏功せず,頻回の輸血を必要とし,腎機能障害も出現したため弁置換術を施行した.術中所見ではring dehiscenceを認めなかったが,後交連付近はannuloplasty ringの内膜化が乏しかった.再手術後は溶血および全身状態はすみやかに改善した.逆流量が軽度であっても高速のjetがringに衝突することにより高度の溶血を生じる可能性があると考えられた.
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