日本心臓血管外科学会雑誌
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腋窩動脈送血を用いた真性胸部大動脈瘤手術
術後脳合併症予防の観点から
内田 徹郎箕輪 隆保坂 淳小鹿 雅隆乾 清重渡辺 隆夫島崎 靖久
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2002 年 31 巻 4 号 p. 266-268

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抄録
大腿動脈を送血経路として用いる胸部大動脈瘤手術は広く行われているが,体循環が逆行性ゆえの合併症が危惧される.1996年9月以降,脳合併症予防目的に施行した腋窩動脈送血法による真性胸部大動脈瘤手術12例を検討した.症例は全例男性で手術時年齢は65~80歳(平均72歳).術式は全弓部置換術10例,パッチ形成術2例であった.腋窩動脈送血に関して,直接動脈にカニュレーションを行ったのが2例,人工血管を縫着して行った症例が10例であった.術前脳梗塞の既往を有する1例に術後脳梗塞を発症,手術死亡となった.術後の軽度譫妄を3例に認めたが,短期間で改善,脳梗塞発症例以外は全例独歩退院した.腋窩動脈送血による順行性送血と広範囲に病変部を切除することを基本方針とした弓部全置換の積極的導入により死亡率と脳合併症は低下し,動脈硬化性病変が著しい本症でも比較的安全に手術が行いうると考えられる.
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