日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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31 巻, 4 号
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  • 足立 孝, 横山 正義, 小山 邦広, 桑田 裕美, 松本 卓子, 宮野 裕, 大貫 恭正, 新田 澄郎
    2002 年 31 巻 4 号 p. 243-246
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大動脈弁位19mm二葉弁術後5~10年の遠隔期心機能および予後について検討した.術後10年以上(最長16年)10例と,術後5~9年まで(最長9年)の7例,計17例を対象とし予後について検討した.さらに心臓超音波断層法を施行しえた10年以上および5年以上経過の各6例でLVEF,%FS,LVDd,LVDs,PWT,IVST,人工弁圧較差(PG)をそれぞれ計測し,左室心筋重量(LVm)および体表面積(BSA)を加味した左室心筋重量係数(LVMI)を算出した.圧較差では10年以上および5年以上の両群とも高値となる症例もあったが,心機能に関しては保たれNYHAの悪化もなかった.圧較差が高値だった症例はBSAが1.53m2以上であった.LVMIは遠隔期で増加傾向を示した.19mm AVRは症例を選択すれば遠隔期においても良好なQOLを得られると考えるが,圧較差の増加やLVMI増加の可能性もあるため注意深い精査観察が必要である.
  • 馬瀬 泰美, 河井 秀仁, 片山 芳彦, 木村 誠, 庄村 赤裸
    2002 年 31 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    当施設で心筋梗塞後合併症として手術を施行した,乳頭筋断裂(2例),左室自由壁破裂(3例),心室中隔穿孔(11例)を対象とした.乳頭筋断裂症例はいずれも後乳頭筋の完全断裂で,MVRを施行した.1例は術前からのPCPS装着により救命できたが,他の1例は術後LOSにて死亡した.左室自由壁破裂症例は,oozing型が2例,blow out型が1例で,blow out型を含め2例が救命できた.救命例はいずれも術前からのPCPS装着症例であった.心室中隔穿孔症例は,男性7例,女性4例で,手術術式はパッチ閉鎖が7例,直接閉鎖,apical amputationがおのおの1例,Komeda-David法が2例であった.11例中6例が救命できた.急性心筋梗塞後合併症では,急激に循環動態が悪化する場合が多く,積極的にIABP,PCPSを使用し,循環動態を維持したうえで,早急に手術を行うことが重要である.
  • 森重 徳継, 田代 忠, 山田 隆司, 木村 道生
    2002 年 31 巻 4 号 p. 252-257
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    逆行性持続的血液心筋保護法(RCBC)の至適灌流温度を検討した.待機的CABG症例35例を対象とし,RCBCの温度によりC群(20℃,12例),T群(30℃,11例),W群(36℃,12例)の3群に分けた.再灌流時の心筋酸化ストレスの指標として過酸化脂質,酸化型グルタチオン(GSSG),血漿myeloperoxidase(MPO)値の冠動静脈較差を測定した.術後CKMB最高値,術後心機能(LVSWI,RVSWI,RVEF)も検討した.再灌流時GSSGの冠静脈への遊離はC群でT群・W群に比較して有意に増加した.再灌流時の過酸化脂質,MPOの冠動静脈較差に3群間で差はなかった.術後CKMB最高値はT群において有意に低値であった.術後心機能は3群間に差はなかった.以上より30℃のRCBCが最も良好な心筋保護効果を示した.
  • 鷹羽 浄顕, 山里 有男, 山田 知行
    2002 年 31 巻 4 号 p. 258-261
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1993年4月から1999年12月まで過去7年間に当科で経験した破裂性腹部大動脈瘤緊急手術症例44例を対象とし,手術成績を検討した.病院死亡は8例であり,18.2%と比較的良好な成績であった.麻酔導入時ショックに対する対応策として,消毒およびドレーピングなどの執刀準備を行ったうえで,麻酔導入挿管と同時に執刀を開始した.すべて,腹部正中切開にて行った.術前および術中因子において生存群および死亡群に分けて統計的解析を行ったところ,術前因子としては,術前意識消失の有無(p=0.018),術前心停止の有無(p=0.015),術前ショックの持続時間(h)(p=0.031),麻酔導入時収縮期血圧60mmHg以下(p=0.019),また,術中因子としては,腹腔内破裂(p=0.010),術中輸血量(p=0.043)において統計的有意差を認めた.今回の検討で救命率81.8%と良好な結果が得られたのも,迅速な診断と手術室搬入,手術開始にさいし,執刀準備を行ったうえで,麻酔導入挿管と同時に執刀を開始することにより導入時低血圧回避が可能であったためと考えられ,最も習熟した手段で副損傷なく,手早く大動脈遮断を行い出血を制御することが,重要であると考えられる.
  • 吉田 博希, 和泉 裕一, 眞岸 克明, 田中 和幸, 久保田 宏
    2002 年 31 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    過去7年間に血行再建術を施行した下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)血行再建症例127例を対象にその生命予後を検討した.男性108例,女性19例で,初回手術時の年齢は49~88歳,平均71.2歳であった.虚血性心疾患を21%,糖尿病を20%に合併していた.Follow up期間は0~90ヵ月(平均33ヵ月),follow up率は95%であった.手術死亡は2例(1.6%),遠隔死亡は29例で,全体の術後5年生存率は69.7%であった.男性の5年生存率は71.6%,女性は62.3%で両群間に有意差はなかった.虚血性心疾患合併例の5年生存率は57.0%,非合併例は74.2%,糖尿病合併例は65.5%,非合併例は70.9%でいずれも統計学的有意差はなかった.下肢の大切断を余儀なくされたものは7例で,それらの1年生存率は42.9%で,非切断例の93.0%に比べ明らかに生命予後が不良であった(p<0.01).
  • 術後脳合併症予防の観点から
    内田 徹郎, 箕輪 隆, 保坂 淳, 小鹿 雅隆, 乾 清重, 渡辺 隆夫, 島崎 靖久
    2002 年 31 巻 4 号 p. 266-268
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大腿動脈を送血経路として用いる胸部大動脈瘤手術は広く行われているが,体循環が逆行性ゆえの合併症が危惧される.1996年9月以降,脳合併症予防目的に施行した腋窩動脈送血法による真性胸部大動脈瘤手術12例を検討した.症例は全例男性で手術時年齢は65~80歳(平均72歳).術式は全弓部置換術10例,パッチ形成術2例であった.腋窩動脈送血に関して,直接動脈にカニュレーションを行ったのが2例,人工血管を縫着して行った症例が10例であった.術前脳梗塞の既往を有する1例に術後脳梗塞を発症,手術死亡となった.術後の軽度譫妄を3例に認めたが,短期間で改善,脳梗塞発症例以外は全例独歩退院した.腋窩動脈送血による順行性送血と広範囲に病変部を切除することを基本方針とした弓部全置換の積極的導入により死亡率と脳合併症は低下し,動脈硬化性病変が著しい本症でも比較的安全に手術が行いうると考えられる.
  • 術後脳合併症診断の感度向上に有用か?
    大竹 普, 沖 淳義, 岡田 良晴, 饗場 正宏, 川田 忠典, 高場 利博
    2002 年 31 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    脳組織損傷時に脳脊髄液中および血液中に特異的に上昇するとされるS-100β血中濃度とともに体外循環中の中枢神経系モニターとして近赤外線分光法(rSO2),短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)の同時測定を行い,多角的中枢神経系機能監視による脳合併症の早期診断上の有用性を検討した.対象は1999年9月から2000年2月までに当科において体外循環(CPB)手術を施行した連続37症例中すべての測定が同時に行われた26例を対象とした(男性19例,女性7例).年齢は46~85歳,平均67±10歳であった.術後脳合併症を認めたのは5例であった.rSO2での異常判定は6例で,そのうち脳障害判定を認めたのは3例であった.SSEPでの異常判定例は認められなかった.S-100βはCPB前0.07±0.13μg/l(以下単位省略),CPB後1時間1.91±1.49と有意に上昇し,CPB後24時間では0.35±0.56と有意に低下した.脳障害合併群と非合併群の比較ではCPB後1時間では両群に差は認められなかったが,CPB後24時間では脳障害合併群1.01±1.14,非合併群0.22±0.24と脳障害合併群において有意に高値を示した(p<0.01).rSO2,SSEPは測定領域外の巣病変に関して,その診断能力は乏しかった.S-100βとくにCPB後24時間値は脳合併症例で有意に高値を示したが,S-100βの脳合併症早期診断に対する有用性はCPB直後より頻回な測定を行い,さらなる検討を要すると考えられた.
  • 深田 靖久, 松居 喜郎, 田辺 達三, 安田 慶秀
    2002 年 31 巻 4 号 p. 274-277
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は71歳.男性.腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CTで炎症性総腸骨動脈瘤を両側に認め,左右の尿管は肥厚した動脈瘤壁に巻き込まれていた.尿路造影で両側の水腎症を認めたので,術前に尿管ステントを留置したのち,Y型人工血管置換術および尿管剥離術を施行した.尿管は動脈瘤壁に強固に癒着していたが,尿管ステントをガイドに剥離可能であった.術後の尿路造影では両側とも尿管の通過性は良好であり,水腎症は改善していた.炎症性動脈瘤により癒着した尿管の剥離には術前の尿管ステント挿入が有用であった.
  • 徳永 千穂, 軸屋 智昭, 三原 和平, 清田 純, 内藤 和寛, 寺田 康, 三井 利夫
    2002 年 31 巻 4 号 p. 278-281
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は22歳男性.強度の漏斗胸,僧帽弁閉鎖不全症に,Stanford A型大動脈解離を合併したMarfan症候群に対して一期的に上行大動脈人工血管置換術,僧帽弁置換術,胸骨翻転術を行った.漏斗胸を合併する長時間の大血管手術では,術視野の確保や術後の循環動態の安定のため一期的手術が望ましいとされているが,一方では胸骨感染の危険が高くなるという問題が生じる.このためわれわれは胸骨への血流を保持できるという利点のある腹直筋有茎性胸骨翻転術を選択した.胸骨翻転術を選択したことにより術中良好な視野を得ることができ,また閉胸後の循環動態もきわめて安定していた.しかし術後落痛のために局所の安静が保てず,胸骨動揺を認めたため第7病日に胸骨再固定術を必要とした.腹直筋有茎性胸骨翻転術を選択したことにより,胸骨への血流は保たれ,長時間の手術に耐えうることができたが,十分な疼痛対策と局所の安静もきわめて重要であると考えられる.
  • 坂本 俊一郎, 落 雅美, 大久保 直子, 石井 庸介, 別所 竜蔵, 田中 茂夫
    2002 年 31 巻 4 号 p. 282-284
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,男性.大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症の精査のために大動脈造影施行後,Stanford A型急性大動脈解離を発症した.3週間後に大動脈基部~弓部全置換術を施行し,末梢側はelephant trunkとした.8ヵ月後に残存する胸部下行大動脈の解離に対して胸部下行大動脈置換術を施行した.術中下半身の血行を維持するため左鎖骨下動脈に吻合した人工血管と胸部下行大動脈遠位部に挿入した送血管を連結して一時的バイパスを置いた.手術終了直後に両下肢の阻血が出現し,新たな解離の発症と診断した.ただちに開腹後,腹部大動脈の解離内膜の切除を施行した.経過は良好で術後3週間で退院した.治療および検査中にくり返し急性大動脈解離を発症することは希と思われるが,Marfan症候群の血管の脆弱性を再認識し,また治療上常に大動脈解離の発症を念頭におく必要性を認識させる示唆に富む症例であり報告する.
  • 吉川 正人, 宮本 裕治, 光野 正孝, 吉龍 正雄, 大西 健二
    2002 年 31 巻 4 号 p. 285-287
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.左膝上部ナイフ刺創後17年目に,患肢の大腿~下腿内側に怒張した下肢静脈瘤を主訴として受診した.左鼠径部にthrillを触知し,左下腹部に手拳大の拍動性腫瘤を触知した.静脈造影では膝窩静脈に造影剤のto and froを認め,動脈造影および造影CTでは膝窩動静脈瘻と拡張した大腿動静脈,さらに径9cmのiliac venous aneurysmを認めた.血液ガスデータより算出したシャント率は3.4であった.手術は,瘻孔部の共通管を開放し,同部の動静脈をそれぞれ径6mm,8mmのringed EPTFE graftにて再建し動静脈瘻を分離した.術後,下肢静脈瘤は軽減し,3週間後の造影CTではiliac venous aneurysmは径3.6cmまで著明な縮小を認め,内部に血栓形成の所見もなく,現在外来経過観察中である.外傷性動静脈瘻において,瘻孔部以外の部位にvenous aneurysmを形成した例は過去に2例しか報告がなく,希な症例と考える.
  • 熊野 浩, 山口 明満, 木地 達也, 丸橋 裕之, 加藤 聡
    2002 年 31 巻 4 号 p. 288-291
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,女性.23歳時に皮膚生検でEhlers-Danlos症候群と診断されていた.大動脈弁輪拡張症による大動脈弁閉鎖不全症ならびに上行大動脈瘤に対して大動脈基部置換術を施行した.手術の工夫として,末梢側吻合は残存大動脈に対する物理的侵襲を避けるために左大腿動脈送血による低体温循環停止・脳分離体外循環としてopen distal anastomosisとした.さらに中枢側吻合は大動脈壁を利用して大動脈弁輪を補強した.無輸血で手術を終了し,術後経過は良好であった.組織脆弱性がみられるEhlers-Danlos症候群においても,術式の工夫などで安全に開心術を行いうると考えられた.
  • 坂尾 寿彦, 角岡 信男, 中川 博道, 加洲 保明
    2002 年 31 巻 4 号 p. 292-295
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性,突然の胸背部痛で緊急入院し,Stanford type A大動脈解離にて上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した.左下肢の血流障害も認め,左右大腿動脈バイパス術を施行した.術後縦隔炎を合併し,一期的に大網充填術を施行し軽快した.術後1ヵ月目に正中創上部の発赤腫脹が出現した.その後,背部痛が出現し,胸部CTと血管造影で吻合部仮性動脈瘤を認めた.緊急にて,再度人工血管置換術を施行し,術後経過は良好であった.人工血管置換術後の縦隔炎吻合部仮性動脈瘤は,治療に難渋することが多い.縦隔炎に対し,一期的に大網充填を施行し有用であった.吻合部仮性動脈瘤に対して,再度人工血管置換術を施行したが,人工血管の感染があれば同種大動脈の使用も考慮する必要がある.
  • 大井 啓司, 丸山 俊之
    2002 年 31 巻 4 号 p. 296-299
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は84歳男性.3枝病変の不安定狭心症に対し,緊急冠動脈インターベンション(#3へのstent留置と#6,7,8,high lateral branch (HL)へのballoon angioplasty)が施行された.この際カッティングバルーンにより#7に冠動脈破裂を生じたため,バルーンカテーテルによる圧迫止血にてbail-outされ退院となった.3ヵ月後に胸痛発作が再発し,再入院.造影にて#7の径10mmの仮性冠動脈瘤,および#7とHLの再狭窄が認められ手術適応とされた.高齢を考慮し,手術侵襲軽減の目的で体外循環非使用冠動脈バイパス術(off-pump CABG)を行った.仮性瘤の末梢側に左内胸動脈によるバイパスを行い,続いて仮性瘤の結紮術を施行した.術後造影では仮性瘤は造影されず,グラフトの良好な開存が認められ,軽快退院した.仮性冠動脈瘤は冠動脈インターベンション療法の危険な合併症の一つであるが,off-pump CABGと瘤結紮術により良好な結果を得た.
  • 水野 朝敏, 堀越 茂樹, 斎藤 文美恵, 鴛海 元博
    2002 年 31 巻 4 号 p. 300-303
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性,DeBakey I型急性大動脈解離に対する上行大動脈置換術後に大動脈弁閉鎖不全症を発症した.術中所見ではNCC部分は再解離し内膜はflap様となり,腔を形成していた.手術は大動脈弁および再解離したflapを切除し,Freestyle®弁を用いたfull root法によるAVRを施行した.また弓部残存解離に対してGel-Weave® arch graftを用いて,右腕頭動脈,左総頸動脈を再建した.AR発生の原因となった再解離は,NCC部分の中枢側人工血管吻合部より発生していた.再解離した壁は壊死性変化を認めており,初回手術時に使用したGRF糊®の影響が示唆された.また手術後のFreestyle弁の圧較差は低値を示し,良好な血行動態の維持に有用であるとともに,胸部下行大動脈に依然として残存解離が存在し再手術の可能性のある本症例では,抗凝固治療を必要としないFreestyle弁の使用は,今後の経過観察,治療計画にとって有利と考えられた.
  • 舟波 誠, 成澤 隆, 関口 茂明, 田中 弘之, 山田 眞, 川田 忠典, 高場 利博
    2002 年 31 巻 4 号 p. 304-307
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤に連続する左総腸骨動脈瘤と左総腸骨静脈との間に動静脈瘻を形成した1手術例を報告した.症例は72歳男性で高心拍出量性心不全,両下肢浮腫,血尿を伴い本症に特徴的な病態を示し,腹部CT,DSAにて術前診断が可能であった.手術はocclusion balloon catheter,自己血回収装置を活用し直径10mmの瘻孔を直接縫合閉鎖し,腎動脈下腹部大動脈・両側外腸骨動脈間に血行再建術を施行し,術後は順調な経過をたどった.動脈瘤破裂の合併症として腸骨動静脈瘻は希であり,その発生形態の理解と的確な外科的処置が必要と考えられた.
  • 呉 海松, 外山 雅章, 水野 友裕, 真鍋 晋, 吉崎 智也
    2002 年 31 巻 4 号 p. 308-310
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は大動脈炎症候群の診断を受けた34歳の女性.出産を強く希望しており,術後抗凝固療法を必要としないFreestyle生体弁(Freestyle弁)を用いて大動脈基部置換を施行した1例を報告する.精査で大動脈弁輪径30mm,Valsalva洞径43mm,大動脈弁閉鎖不全(Seller's III度),上行大動脈瘤(最大径50mm)を認めた.Freestyle弁(29mm)とHemashield人工血管(30mm)を用いて大動脈基部および上行大動脈を置換した.Valsalva洞周辺は炎症による癒着が強く,剥離困難であるため,冠動脈の再建はCabrol変法に準じて行った.術後経過は良好であった.大動脈炎症候群によるFreestyle弁に対する遠隔期の影響はまだ不明だが,術後のQOLを配慮し,Freestyle弁の応用は重要な選択肢の一つだと思われる.
  • 佐々木 昭彦, 坂田 純一, 佐藤 浩樹, 数井 暉久
    2002 年 31 巻 4 号 p. 311-313
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.主訴は喀血.既往歴に遠位弓部大動脈瘤で平成3年に胸骨正中切開でinclusion法にて3分枝付き人工血管で弓部全置換術を受けている.造影CTでは末梢の吻合部に径5cmの瘤を人工血管と瘤壁の間に認めた.手術は平成12年11月24日左第4肋間開胸で入った.瘤の癒着は高度で瘤の中枢側の剥離,遮断は困難なため,F-Fバイパスで直腸温18℃まで冷却し,高本法による単純低体温逆行性脳灌流を補助手段とし,前回の3分枝付き人工血管の末梢側を血管の内側からはずして1分枝付き人工血管と吻合した.逆行性脳灌流時間は16分であった.冷却に57分,加温に1時間52分要したが術中の出血は少なく脳合併症も認めなかった.
  • 村山 順一, 吉戒 勝, 蒲原 啓司
    2002 年 31 巻 4 号 p. 314-316
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.慢性腎不全にて加療中に腹部大動脈瘤を指摘された.腹部正中切開にてアプローチし,腎峡部は温存,Y字型人工血管にて腎動脈下より左右総腸骨動脈までの置換を行い,併せて2本の副動脈も再建した.術後造影にて再建した動脈は開存しており,腎機能の増悪も認めていない.馬蹄腎を合併した腹部大動脈の手術において,腎栄養血管の可及的再建,温存は術後の腎機能維持に重要であると考えられた.
  • 古谷 保博, 阪越 信雄
    2002 年 31 巻 4 号 p. 317-319
    発行日: 2002/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は88歳女性.急性心筋梗塞にて緊急入院した.心臓超音波検査にて心室中隔穿孔の合併を認めたため,大動脈内バルーンパンピングを挿入した.右心カテーテルにて肺体血流比は3.0であった.その後急性腎不全を併発し,持続的血液透析濾過を開始した.循環動態が徐々に悪化してきたため,第6病日に緊急手術を施行した.手術は牛心膜パッチを用いて中隔穿孔部を閉鎖し,左室切開部はそのパッチを含め2枚のフェルトにて縫合閉鎖した.術後は心不全,呼吸不全,腎不全などの合併症を併発したが,ベッドサイド歩行が可能となった術後77日目に,リハビリ目的で他院に転院した.本症例はわれわれが調べえた限りでは心室中隔穿孔の手術成功例として本邦最高齢であった.
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