日本心臓血管外科学会雑誌
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体外循環中における脳組織内酸素飽和度(rSO2),短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)の同時測定および血中S-100βの変動について
術後脳合併症診断の感度向上に有用か?
大竹 普沖 淳義岡田 良晴饗場 正宏川田 忠典高場 利博
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2002 年 31 巻 4 号 p. 269-273

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抄録

脳組織損傷時に脳脊髄液中および血液中に特異的に上昇するとされるS-100β血中濃度とともに体外循環中の中枢神経系モニターとして近赤外線分光法(rSO2),短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)の同時測定を行い,多角的中枢神経系機能監視による脳合併症の早期診断上の有用性を検討した.対象は1999年9月から2000年2月までに当科において体外循環(CPB)手術を施行した連続37症例中すべての測定が同時に行われた26例を対象とした(男性19例,女性7例).年齢は46~85歳,平均67±10歳であった.術後脳合併症を認めたのは5例であった.rSO2での異常判定は6例で,そのうち脳障害判定を認めたのは3例であった.SSEPでの異常判定例は認められなかった.S-100βはCPB前0.07±0.13μg/l(以下単位省略),CPB後1時間1.91±1.49と有意に上昇し,CPB後24時間では0.35±0.56と有意に低下した.脳障害合併群と非合併群の比較ではCPB後1時間では両群に差は認められなかったが,CPB後24時間では脳障害合併群1.01±1.14,非合併群0.22±0.24と脳障害合併群において有意に高値を示した(p<0.01).rSO2,SSEPは測定領域外の巣病変に関して,その診断能力は乏しかった.S-100βとくにCPB後24時間値は脳合併症例で有意に高値を示したが,S-100βの脳合併症早期診断に対する有用性はCPB直後より頻回な測定を行い,さらなる検討を要すると考えられた.

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