日本災害医学会雑誌
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事例報告
南海トラフ地震に直面する和歌山県の被災特性と求められる対応
岩﨑 安博 福島 純一國立 晃成柴田 尚明藤本 順智中島 強是枝 大輔
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2025 年 30 巻 3 号 p. 113-119

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抄録

南海トラフ地震が発生した場合、和歌山県では西日本で最大の人的被害が発生する。和歌山県では南海トラフ地震を想定した災害対応訓練を繰り返し行ってきたが、その中で和歌山県の被災特性と課題がわかってきた。和歌山県の幹線道路等の交通網は沿岸部に集中しており、発災直後は紀伊半島南部が孤立する。そのため、急性期は航空搬送体制が必須となる。その対応として和歌山県は県内に5カ所の航空搬送拠点を計画し、徐々に整備してきた。また、県北部の病院が南部の傷病者の収容を引き受ける体制も必要である。しかし、耐震補強がなされていない病院や自家発電の稼働時間が24時間未満の病院が多数あることもわかった。すべての病院に機能改善が望まれるが、まずは災害拠点病院が率先して機能を拡充し、近隣医療圏の災害医療を支援する必要がある。そのうえで、県外からの支援が得られるまで、和歌山県全体で、自県だけで耐える準備を整えることが必要である。

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