抄録
歯科鋳造用 84Ni-9Cr 合金鋳造体の組織変化を第2報と同様な各種 air-vent system を用いて検討した. その結果, スプルー線 0 度植立で blind-type および closed-type の air-vent system を併用したものでは, フルクラウン型鋳造体内部およびその表層部において等軸型と細長いセル型から成るセル組織の形成することがわかった. 他方, 45度植立で air-vent(blind-type) の併用した時には, 鋳造体内部と表層部では, それぞれ, セルラー・デンドライト組織とセル型のセル組織が形成しているので, この場合の組織形態の分布は均一でないことが明らかになった. 次に, 組織形態の大きさおよびその分布をみると, スプルー線 0 度植立のものでは一般に air-vent の種類に関係なく, 等軸型セル組織が鋳造体表層部全面に約 20 μmの均一な分布がみとめられた. しかしながら, closed-type の air-vent の場合には, セル型組織の不均一な分布がみとめられた. 他方, スプルー線 45度植立で blind-type の air-vent では, セルラー・デンドライト組織のアーム長さもスプルー部近傍で 100〜500 μmのように幅広く分布しており, スプルー部から遠い場所ではこれらの値よりも更に小さいことが判明した.セルラー・デンドライト組織を腐食性から見ると, それら組織間の界面ではなく, Ni偏析を生じる組織のみが強く腐食されているのがみとめられ, この腐食領域がセル界面のみを腐食するセル組織のものよりも極めて大きいことが明らかになった. 以上の点から, 高融点 84Ni-9Cr 合金の場合, 低溶融 Ni 基合金のものと異なってスプルー線の 0 度植立で blind-type の air-vent のものが最適であることが判明した.