抄録
本研究は, 歯科用セメントを水中に浸漬した場合の元素の溶出量, 硬化物表面の性状およびその元素分析に関するものである.
リン酸亜鉛セメントを蒸留水中に1日間浸漬した場合, 溶解量は Zn は 4.2μg/cm2を示し, Mg および Ca は, それぞれ 2.9 および 0.4μg/cm2を示した。7日間浸漬した場合は, 表面に約10μmのリン酸亜鉛の結晶が析出したことを EPMA の測定によって明らかにしている.
カルボキシレートセメントの Zn の溶解量は, 1および7日間ではいずれも比較的小さいが, Mg は1および7日間でそれぞれ 2.9 および 26.2μg/cm2の非常に大きい値を示した.
ケイ酸セメントの溶解量は, 1日で Na は 247.1μg/cm2の大きな値を示し, 7日間では 340.2μg/cm2に達した. また, Si および Al は1日間でそれぞれ 33.0 および 36.1μg/cm2を示し, 7日間では, いずれも増加した.