抄録
カルシウム-リン供給比(Ca/P)fを広範囲に変化させることによってフッ素化アパタイトを合成した(80℃, pH7.4).カルシウム-フッ素供給比をフルオロアパタイトの理論値(Ca/F)f=5と一定にしているにもかかわらず, フッ素の取り込みは(Ca/P)f<1.67できわめて抑制され, (Ca/P)f=1.67の試料ではフルオロアパタイトの理論値に近い値を示したのに対し, (Ca/P)f=0.1の試料ではその約半分しかなかった.一方, a軸の格子定数, 結晶性および溶解性は, (Ca/P)f=1.67一定にし異なるF供給量のもとで合成したフッ素化アパタイトが示す曲線に沿ってほぼ変化した.これらの結果は, フッ素化アパタイトの物理化学的特性が他のイオンより, いかに強くF含有量によって支配されているかを示唆している.