抄録
本研究の目的は, Pd合金成分元素と陶材との結合を究明することである.そこで, 本研究においては三種のPd合金を使用し, その高温酸化挙動や酸化層の構造, 合金と陶材との接着界面の様相をESCA, EPMAを使用して分析を行った.ESCA分析の結果, ディギャシングおよびas cast後の加熱処理で合金表面にはPdO, SnO2, In2O3, CuOまたはCu2O, Sb2O3またはSb2O5などの酸化物が認められた.また, 合金表面に集積する成分元素の相対量をEPMAにより加速電圧を変えて(加速電圧10kVと20kV)分析した結果, 添加元素の表面集積量は加速電圧10kVで分析した場合の方が大きく, これに対して, 主要元素(Pd)の表面集積量は加速電圧20kVで分析した場合の方が大きかった.接着界面のEPMA分析の結果, 添加元素が合金マトリックス内で酸化され, 内部酸化層を形成している様相が確認された.また, 酸化層の構造や形態は, ディギャシング操作の有無により明らかな相違が認められた.接着界面に対し約5°43'の角度を付与して研磨を行い, 界面部を拡大して分析を行ったが, この方法は酸化層の構造や形態を観察するには有効であり, 同部の詳細な分析, 観察を行うことが可能であった.本研究の結果, Pd合金においては添加元素だけではなく, 主要元素も陶材との結合に関与していることが明らかとなり, また合金の操作条件に関してはディギャシング操作は陶材との結合にとって重要な操作条件であることが示唆された.