抄録
本研究の目的は,児童の抑うつ症状と対人関係要因を縦断的に検討し,その関連を明らかにすることであった。小学4年生の児童108名(平均年齢9.94歳;男子59名,女子49名)を対象として質問紙調査を二時点で実施した。第一時点では,自己評定による抑うつ症状,コーピングスキル,ソーシャルサポートおよびソシオメトリックテストによる仲間関係の測定を行った。約9か月後の第二時点では,自己評定による抑うつ症状と対人ストレッサーの測定を行った。その結果,第一時点の抑うつ症状を統制した上で,撤退型コーピング,母親サポート,および対人ストレッサーとコーピングスキルの交互作用が後の抑うつ症状を有意に予測することが明らかになった。交互作用効果においては,家庭ストレッサーが高い場合に,撤退型コーピング(disengagement coping)が後の抑うつ症状の高さを予測することが示された。これらの結果は,抑うつの対人モデルを部分的に支持するものであり,児童期の抑うつにおいて対人関係要因にアプローチすることの重要性が示唆された。