2020 年 31 巻 4 号 p. 201-212
変化の激しい時代に,対話を通して人生を統合し,周囲との関係性の中に意味を創り出す,生涯発達の過程とも重なる創造的な学びの場が必要とされている。本稿では,2020年から全国の小学校で必修化されるプログラミング教育を,地域住民や多世代が主体的に関わることのできる学習機会と捉え,高齢者と大学生が小学生のプログラミング教育を支援する協調学習の場を設計した。この実践の報告を通して,コンピューターを使って多世代が学ぶ場において,参加者が創造的思考をはたらかせていきいきと関わりあう環境条件を探索した。さらに,プログラミング教育を介して多世代で学ぶ発達的意味を探るために,高齢者と大学生における参加による効果検証を試みた。結果からは,多世代が創造的思考をはたらかせる学習環境には,1)誰もが教える人になる利他的な目的の共有,2)自由に役割を選択できる多層な活動の構造,3)テクノロジーを使う均等な機会の提供が重要な要素であることがわかった。プログラミング教育を介して,多世代が参加する協調学習の効果の把握には,個別の参加目的に応じた柔軟な評価法の検討が必要であることが明らかになった。