2018 年 54 巻 1 号 p. 1-13
複雑化した社会技術システムの安全を確保する概念として,Hollnagelは2種類のアプローチを提言している.すなわち,リスクを低減するSafety-Iならびに成功を拡張するSafety-IIという安全の概念である.また,Safety-IIを具現化する手法としてレジリエンスエンジニアリングが提唱されている.本研究は,これまで失敗や過誤に注目して分析されてきた福島第一原子力発電所事故対応の「さらなる事故進展を食い止めた」側面に着目し,レジリエンスエンジニアリングを用いて3号機の注水回復の事例を分析した.その結果から,既存の事故調査の事故対応の捉え方と異なった視点をもつ安全性向上の学習のあり方を明らかにした.