本研究は,人工呼吸器装着場面において,熟練看護師が患者の状況把握のために選択的に取り込んでいる視覚情報について明らかにすることを目的とする.実験は,集中治療領域の部署に所属する新人看護師(以下,新人群)8名と熟練看護師(以下,熟練群)8名を対象とし,人工呼吸器を装着した模擬患者で再現した安静時と状態変化時の2場面の動画を観察した.解析は,画像上に7つの注視領域を設定し,各領域における注視時間,注視回数,視線移動回数を算出し,各場面で群間および群内比較を行った.その結果,熟練群は2場面ともに患者の顔や人工呼吸器の画面,生体情報モニタの注視時間が長く,かつ注視回数も多かった.特に状態変化時は,新人群より有意に顔の注視回数が多く,さらに患者の顔と人工呼吸器の画面の視線移動回数も有意に多かった.熟練看護師は,患者の顔や人工呼吸器の画面,モニタから重点的に情報を取り込みながら患者の状態を把握していたこと,さらに患者の顔と呼吸器の画面の情報を関連させながら把握していたことが示唆された.