抄録
心筋保護液を使用せず心室細動下で行う僧帽弁手術時の人工心肺の留意点を検討した。対象は2004年の15例で,年齢56.2±12.3歳。体外循環時間172.9±53.1分,心室細動時間119.5±35.9分,最低直腸温29.2±0.8℃,最低ヘマトクリット23.4±2.2%,無輸血率67%(10/15)例。心内操作中の心拍再開,空気塞栓脳合併症例は認めなかった。本術式の利点は,(1)大動脈遮断および心筋保護液投与が不要,(2)大動脈基部圧迫によりARを作製することで弁逆流テストが容易などがある。一方,欠点は,無血術野の展開,ARのコントロール,持続的な大動脈基部の気泡除去が必要なことなどである。人工心肺操作の留意点は,(1)無血視野の確保のために,左房ベントを十分引き,吸引が有効でない場合は,循環血液量をやや脱血気味にする。(2)空気塞栓防止のために,やや頭低位とし,気泡抜き用の大動脈ベントを使用する。(3)心室細動中の心筋虚血防止および弁逆流テストを有効に行うために,灌流圧を70-80mmHgに維持することであった。