教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
原著
大学生における身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れ
―楽観的見通し,深刻度評価,専門家への援助要請の必要性との関連―
河合 輝久
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 67 巻 4 号 p. 289-303

詳細
抄録

 本研究の目的は,身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れが当該友人に対する楽観的見通し,深刻度評価,専門家への援助要請の必要性に及ぼす影響を検討することであった。大学生1,000名(有効回答者866名)を対象に質問紙調査を実施した。その結果,「直面化回避志向」と「共鳴懸念」の2因子から成る身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れ尺度を作成し,その信頼性と妥当性の一部が確認された。また,直面化回避志向および共鳴懸念が,原因帰属や楽観的見通しを介して,深刻度評価および専門家への援助要請の必要性に及ぼす影響を検討した。共分散構造分析の結果,うつ病事例に対する認知の可否にかかわらず,直面化回避志向は,抑うつ症状を示す友人に対する楽観的見通しと有意な正の関連を,当該友人に対する深刻度評価と有意な負の関連を示していた。一方,共鳴懸念は,抑うつ症状を示す友人に対する深刻度評価と有意な正の関連を示していた。身近な友人の抑うつ症状に対する評価において,身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れのうち,直面化回避志向は深刻視を妨げ,共鳴懸念は深刻視を促すことが示唆された。

著者関連情報
© 2019 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top