教育心理学研究
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原著
保育実践における安全のための制限やきまりに関する判断
―保育者への半構造化面接から―
辻谷 真知子
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2024 年 72 巻 4 号 p. 213-224

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抄録

 保育・幼児教育では子どもの安全への関心が高まっているが,重大事故が共通して起きやすい場面や環境を除いては各園における実態に応じて多様な制限やきまりが設定されている。他方で制限やきまりについては道徳性・規範意識の文脈で子ども自身による気づきが重視され,その伝達には保育者自身の葛藤も伴う。本研究では7園の保育者32名を対象に,遊びにおける安全のための制限やきまりを手がかりとした半構造化面接を実施した。データはM-GTAを用いて分析し,Bronfenbrennerの生態学的アプローチによる先行研究(van Rooijen & Newstead, 2016)の枠組みを参考に概念図を検討した。その結果,保育者の判断に関連する5つの層として(1)子ども,(2)子ども間,(3)子どもと保育者/保育者自身,(4)他の保育者や園全体,(5)保護者や園外社会が相互に関連し変容するプロセスが示された。その中で保育者自身の持つ経験・知識・見通しとともに,保育者間での対応の相違や理由について,共有する機会や関係性が重要であることも示唆された。保育者間での共有に本研究の概念モデルを活用しつつ,より多角的な検討が求められる。

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© 2024 日本教育心理学会
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