教育心理学研究
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大学生の怒り特性の変容に及ぼす認知行動療法の有効性
怒りの対処スタイルの個人差を考慮した認知的技法を用いて
金築 智美金築 優根建 金男
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2008 年 56 巻 2 号 p. 193-205

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抄録

本研究では, 怒りの対処スタイルとそれに関する信念を標的とした認知行動療法 (CBT) が, 大学生の怒りの変容に及ぼす効果を調べた。その際に, 個人差要因であるタイプの異なる怒りの対処スタイル (怒りを過度に表出あるいは抑制する) という要因が介入効果に相違をもたらすかどうかを比較, 検討した。実験参加者は, 怒りの特性が高く, かつ怒りの表出傾向が高い者 (AO高者) と怒りの抑制傾向の高い者 (AI高者) の計33名であった。AO高者とAI高者を, CBT群と統制群に振り分け, CBT群には, 4週間にわたるCBTを実施した。その結果, 3ヵ月後のフォローアップ時では, CBT群の特性的な怒りの低減が確認できた。特に, AI高者のCBT群は, 介入期間中における怒りの自己陳述の低減や介入前後での怒りの抑制に関するポジティブな信念が変容していた。他方, AO高者のCBT群の認知的側面の変容は, 必ずしも, AI高者のCBT群と比較して目覚しいものではなかった。このことから, 大学生の怒りを対象としたCBTを施す際に, 一つの個人差要因として怒りの対処スタイルを積極的にとりあげることの意義が示唆された。

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© 日本教育心理学会
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