教育心理学研究
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56 巻, 2 号
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  • 信頼感およびアイデンテイテイとの関連
    永田 彰子, 岡本 祐子
    2008 年 56 巻 2 号 p. 149-159
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, ライフサイクルを通した重要な他者との関係において構築された関係性の各様態の特徴について明らかにするために, 信頼感およびアイデンティティとの関連について検討することを目的とした。成人中期から後期の男女206名を対象に, 関係性様態, 信頼感, アイデンティティを尋ねる質問紙調査を実施した。その結果, 関係性様態と信頼感との関連において, 関係性発達の構成概念である, 重要な他者との関係における葛藤や危機を通して主体的位置づけが重要な要素であることが示された。信頼感が主体的位置づけを行う際の模索の重要なエネルギー源であると推察された。さらに関係性様態とアイデンティティとの関連において, 関係性発達の構成概念である主体的位置づけが重要な要素であることが示された。関係性発達のもう一つの構成概念であるコミットメントの普遍化で関連が見られなかったことについて, アイデンティティ研究のコミットメントと対他者の文脈でのコミットメントは質が異なることが推察された。また, 関係性様態とアイデンティティ・ステイタスとの関連においては, 一部で関連性が見出された。
  • 自己決定理論に基づいて
    安藤 史高, 布施 光代, 小平 英志
    2008 年 56 巻 2 号 p. 160-170
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 児童の積極的授業参加行動に対する動機づけの影響について, 自己決定理論の枠組みを用いて検討することであった。小学校3年生から6年生までの1064名を2群に分け, 国語または算数いずれかの積極的授業参加行動と動機づけに関する調査を実施した。分析の結果,「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の3つの積極的授業参加行動がどちらの教科でも確認され, その尺度得点についても教科差は見られず, 積極的授業参加行動は両教科において共通してみられるものであることが示された。積極的授業参加行動に対する動機づけの影響について構造方程式モデリングによる検討を行ったところ, 内発的動機づけは全ての積極的授業参加行動を促進しているが, 低自律的外発的動機づけは積極的授業参加行動を抑制することが明らかとなった。また, 高自律的外発的動機づけは「挙手・発言」と関連しておらず, 子どもの授業に対する意欲・動機づけを判断するためには, 多様な行動を考慮する必要があると言える。さらに, 学年差についても検討を行ったが, 学年が上がることに伴う何らかの方向性を持った変化は確認されなかった。
  • 淡野 将太
    2008 年 56 巻 2 号 p. 171-181
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    攻撃の置き換え傾向の個人差が, 攻撃の置き換えによって生じやすい家庭内暴力などの攻撃行動を予測することが示されている。本研究では, 日本におけるDAQ (Displaced Aggression Questionnaire: Denson, Pedersen, & Miller, 2006) の利用価値を指摘し, 大学生および専門学校生 (n=777, 年齢範囲=18-24) を対象にした調査によってDAQ日本語版を作成した。日本語版の因子構造は, 原版と同様に,“怒りの反すう”10項目 (α=.92),“報復の企図”11項目 (α=.92),“攻撃の置き換え”10項目 (α=.93) の3因子構造31項目 (α=.93) であった。DAQ日本語版総合尺度および日本版BAQ総合尺度を説明変数, 家庭内言語的暴力尺度を基準変数とする重回帰分析の結果, DAQ日本語版総合尺度は有意な影響力を示した一方 (β=.29, p<.001), 日本版BAQ総合尺度は有意な影響力を示さなかった (β=.10, ns)。攻撃特性から学生の家庭内言語的暴力を予測する場合には, DAQ日本語版が有用であることが示された。
  • 淡野 将太
    2008 年 56 巻 2 号 p. 182-192
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    研究1では, TDA (triggered displaced aggression) パラダイムの実験手続きを仮想場面法に応用し, 妥当性を確認した。研究2では, 仮想場面法において, 挑発者および攻撃対象者の地位として先輩, 同輩, 後輩を設定し, TDAに及ぼす挑発者および攻撃対象者の地位の影響を検討した。攻撃対象者の地位の主効果から,「攻撃対象者: 後輩」群のTDAが「攻撃対象者: 先輩」群より強いことが示された。また, 挑発者の地位および攻撃対象者の地位の交互作用から,(a)「挑発者: 同輩」条件における「攻撃対象者: 同輩」群および「攻撃対象者: 後輩」群のTDAが「攻撃対象者: 先輩」群より強いこと,(b)「挑発者: 後輩」条件における「攻撃対象者: 後輩」群のTDAが「攻撃対象者: 先輩」群および「攻撃対象者: 同輩」群より強いこと,(c)「挑発者: 先輩」条件における「攻撃対象者: 先輩」群のTDAが「挑発者: 同輩」条件における「攻撃対象者: 先輩」群および「挑発者: 後輩」条件における「攻撃対象者: 先輩」群より強いことが示された。本研究結果から, 攻撃対象者の地位が個人より低い場合にTDAを表出しやすいこと, 挑発者の地位と同等の地位もしくは挑発者の地位よりも低い地位の攻撃対象者に対して TDAを表出しやすいことが示唆された。
  • 怒りの対処スタイルの個人差を考慮した認知的技法を用いて
    金築 智美, 金築 優, 根建 金男
    2008 年 56 巻 2 号 p. 193-205
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 怒りの対処スタイルとそれに関する信念を標的とした認知行動療法 (CBT) が, 大学生の怒りの変容に及ぼす効果を調べた。その際に, 個人差要因であるタイプの異なる怒りの対処スタイル (怒りを過度に表出あるいは抑制する) という要因が介入効果に相違をもたらすかどうかを比較, 検討した。実験参加者は, 怒りの特性が高く, かつ怒りの表出傾向が高い者 (AO高者) と怒りの抑制傾向の高い者 (AI高者) の計33名であった。AO高者とAI高者を, CBT群と統制群に振り分け, CBT群には, 4週間にわたるCBTを実施した。その結果, 3ヵ月後のフォローアップ時では, CBT群の特性的な怒りの低減が確認できた。特に, AI高者のCBT群は, 介入期間中における怒りの自己陳述の低減や介入前後での怒りの抑制に関するポジティブな信念が変容していた。他方, AO高者のCBT群の認知的側面の変容は, 必ずしも, AI高者のCBT群と比較して目覚しいものではなかった。このことから, 大学生の怒りを対象としたCBTを施す際に, 一つの個人差要因として怒りの対処スタイルを積極的にとりあげることの意義が示唆された。
  • PISA 2003年調査のDIFによる分析
    鈴川 由美, 豊田 秀樹, 川端 一光
    2008 年 56 巻 2 号 p. 206-217
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    わが国の生徒は数学の知識や技能を日常生活の場面で活かす能力が弱いと言われている。OECDが実施している生徒の学習到達度調査 (PISA) は, このような生活に関係する課題を活用する能力を測ることを目的とした国際的な学力調査である。この調査の結果から, 他の国と比較したわが国の特徴を分析することができるが, 国の成績の順位や各項目の正答率はその国の教育水準を反映するため, 知識を日常場面で活かす力という観点からはそれを直接比較することはできない。本論文では, PISA2003年調査の「数学的リテラシー」の結果を反応パターンから分析し, 多母集団IRT (Item Response Theory) によるDIF (Differential Item Functioning) の検討を行うことで, それぞれの国に所属する同一水準の学力の生徒の反応パターンの違いを明らかにした。分析の対象は, オーストラリア, カナダ, フィンランド, フランス, ドイツ, 香港, アイルランド, イタリア, 日本, 韓国, オランダ, ニュージーランド, アメリカの13か国である。分析の結果, この13か国のうち, わが国は最も特異な困難度のパターンを持っているということが明らかになり, またその特徴として, 日常生活に関連する項目を解く力が弱いということが示された。
  • 高坂 康雅
    2008 年 56 巻 2 号 p. 218-229
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 青年期における劣等感の発達的変化を, 自己の重要領域との関連から明らかにすることである。中学生・高校生・大学生549名に, 予備調査から選択された劣等感項目50項目への回答と, 自己の重要領域に関する自由記述を求めた。劣等感項目は予備調査と同様の8因子が抽出され, 自己の重要領域に関する記述は10カテゴリーに分類された。自己の重要領域と劣等感得点との関連を検討したところ, 中学生では知的能力を重要領域としており, 学業成績の悪さに劣等感を感じ, 高校生では対人魅力を重要領域としており, 身体的魅力のなさに劣等感を感じていた。そして, 大学生になり, 自己承認を重要領域とするようになると友達づくりの下手さに劣等感を感じるが, 人間的成熟を重要領域とするようになると劣等感はあまり感じられなくなることが明らかとなった。
  • 年代ごとの影響の比較を中心に
    高木 亮, 淵上 克義, 田中 宏二
    2008 年 56 巻 2 号 p. 230-242
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は教師の職業ストレスを改善するために, ストレス抑制方法の議論につながる要因を取り上げ, そのストレス抑制効果を検討することである。ストレス抑制要因として職務ストレッサーである職務葛藤と, 職業生活の適応に有効であるとされる職業人の認知・態度からなるキャリア適応力を取り上げることとした。また, ストレス反応についてはバーンアウトを測定するBurnout Inventoryとともに, 独自に行動的ストレス反応の質問項目を作成することで測定することとした。2003年に小・中学校教師を対象に調査を実施し, 3701部の有効回答を分析の対象とした。職務葛藤, キャリア適応力, ストレス反応の因子構造を確認した上で二元配置の分散分析を用いて年代ごとのストレッサー・ストレス反応過程モデルの検討を行った。その結果, 職務葛藤は各年代でストレッサーとなっており, キャリア適応力は特に40代教師でのストレス抑制効果がみられた。
  • 指導スタイルとサポート的態度に着目した検討
    瀬尾 美紀子
    2008 年 56 巻 2 号 p. 243-255
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 学習場面での援助要請 (自律的援助要請・依存的援助要請) において, 援助者としての教師がどのような役割を果たしているのかを明らかにするために, 教師の指導スタイル (教師主導型・相互対話型) とサポート的態度に焦点を当てた検討を行った。中学生2,304名とその数学担当教師22名を対象に質問紙調査を実施して, 階層線形モデル (HLM) による分析を行った。その結果, 教師主導型指導と依存的援助要請との間に有意な関連が示された。一方, 相互対話型指導と自律的援助要請との間には有意な関連は示されなかった。また, 学習者要因 (学習観, つまずき明確化方略) と援助要請の間の有意な関連が示され, さらにつまずき明確化方略との関連にはクラス間差も確認された。そこで, クラス間差を説明するための教師要因を投入したところ, 教師主導型指導が有意な負の関連を示した。教師のサポート的態度は自律的, 依存的どちらの援助要請とも有意な関連は示されなかった。以上の結果から導かれる教育的示唆について述べた。
  • 学習観の個人差に注目して
    篠ヶ谷 圭太
    2008 年 56 巻 2 号 p. 256-267
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 事前に教科書を読むという予習が授業理解に与える影響とその個人差について, 中学2年生を対象とした歴史授業を用いて実験的に検討した。また, 予習の効果の授業内プロセスについて検討を行うため, ノートのメモなどの授業中の学習方略に注目した。さらに本研究では, 予習が授業への興味に与える影響や, 予習時の質問生成の効果についても併せて検討した。予習群, 質問生成予習群, 復習群を設定した実験授業を行い, 予習-復習, 質問生成あり-なしの対比を用いて検定を行った結果, 予習は歴史の背景因果の理解に効果を持つことが示された。ただし, 学習観を個人差変数とした適性処遇交互作用 (ATI) の検討の結果, そのような予習の効果は学習者の意味理解志向の高さによって異なることが明らかになった。また, 学習方略に注目した授業内プロセスの検討の結果, 予習が授業理解に与える影響とその個人差は授業中のメモを媒介して生起することが示された。さらに本研究では, 予習は授業への興味を下げないことや, 予習時の質問生成には効果が見られないことが示された。
  • 援助者の観察反応を通して
    須藤 邦彦
    2008 年 56 巻 2 号 p. 268-277
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 1名の自閉性障害児を対象に, 困難な状況にある他者を援助する行動を獲得させ, 援助行動を生起させるための様々な弁別刺激の効果を検討した。ここでは, 援助行動を生起させるための弁別刺激を,(1) 相手から援助を要求される言語刺激 (言語刺激条件),(2) 相手の物品の不足という状況刺激 (状況刺激条件),(3) 相手から援助を要求される言語刺激と観察反応を自発させる刺激 (複合刺激条件), という3点で統制した。その結果, 言語刺激条件や状況刺激条件のみならず, 複合刺激条件においても標的行動が生起し, それが維持・般化した。このことから, 自閉性障害児が, 言語刺激や状況刺激のような手がかりだけでなく, 観察反応を自発させる刺激のような援助者自身に属する手がかりを援助行動の弁別刺激として利用できる可能性が示唆された。また, これらの刺激を複合して, より高次な援助行動を生起させることができることも推察された。
  • 小学校1年生の授業場面における問題エピソードの分析
    本田 ゆか, 佐々木 和義
    2008 年 56 巻 2 号 p. 278-291
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 小学校1年生の学級づくりに関する担任教師から児童への個別的行動介入の効果について検討した。4月から5月にかけての22日間の授業日において, 当初の3日間をベースライン期, 19日間を介入期, 7月・9月・11月の各3日間をフォローアップ期として教室内での授業場面における教師と児童の行動観察を行い, その記録について分析を行った。その結果, ベースライン期に急激に増加していた児童の問題エピソード数が, 担任教師による複数カテゴリーからの介入によって有意に減少していること, フォローアップ期においても効果が維持されていうことが明らかになった。また, AD/HD児の問題エピソードが, 学級全体の問題エピソード数の減少に影響されて改善されることが示された。さらに, 問題エピソードが多い場合は複数の教師による介入が効果的であること, 教師のプロンプトについては, その回数よりも質やタイミング, フィードバックの方法による効果が大きいことが考察された。
  • 2008 年 56 巻 2 号 p. 301-
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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