2003 年 21 巻 1 号 p. 18-23
主観体験であるdreamy stateを誘発させ、さらに意識消失、痙れんに至らしめるような発作を具現化、促進precipitationする現象と逆にdreamy stateを途中で頓挫させ、抑制inhibitionする現象を経験したので、そのメカニズムについて検討した。Precipitationに関しては、1例においては「昔のことを想いだす」ことによってdreamy stateを引き起こし、もう1例はdreamy stateが起こって、それに魅せられて、そこに留まり、時に痙れんをみる症例であり、両例においてprecipitationの作用が異なっていた。文献例からもdreamy stateのprecipitationは「昔の発作状況を想いだす」タイプと「魅せられる」タイプに2分される。Inhibitionに関しては、両例とも別のことを考えることにより、dreamy stateから脱却できた。両例のprecipitationのメカニズムから、dreamy stateの特異性が見出され、そこには情動、記憶、認知が複雑に絡んだ様相を呈していた。結論として、情動が先駆して、記憶、さらに認知に至るものと思われ、神経生理学的にもdreamy stateにおいて扁桃体から海馬、大脳皮質に至る大脳のネットワークが想定された。