実験社会心理学研究
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日本における災害ボランティアセンターのこれまでとこれから―「公」と「民」の対立を乗り越えた先に
頼政 良太宮本 匠
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2022 年 61 巻 2 号 p. 37-56

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抄録

災害ボランティアセンターは,「公的」な機関が設立するものと,「民間」が設立するものがある。災害時の組織は管理・統制モデルと即興・自律モデルに分けられるが,阪神・淡路大震災以降,管理・統制モデルを志向する「公的」な災害ボランティアセンターへの一元化が進み,「民間」との分化や対立関係も見られるようになった。さらに,管理・統制によって生まれる「秩序化のドライブ」により,ボランティアの多様性が失われてきた。本研究では,阪神・淡路大震災以降に設立された災害ボランティアセンターの詳細な事例研究を通し,ボランティアによる助け合いというポジティブな面と,ボランティアは見ず知らずの他者であり不気味な存在であるというネガティブな面の両義性に対応するために管理・統制が進んでいった点を明らかにした。さらに,「公」と「民」の分化や対立の背景にその両義性があることを指摘した。最後に,「公的」な災害ボランティアセンターだけでなく,多様な主体による「民間」災害ボランティアセンターが存在することで,この分化や対立を乗り越える可能性を示した。

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© 2022 日本グループ・ダイナミックス学会
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