論文ID: 2313
本研究は,2021年の改正少年法による18歳・19歳の実名報道解禁を背景に,実名報道された特定少年に対する市民の受容の規定因を検討することを目的とした。このため,実名報道された特定少年の受容に関連することが予測される以下4つの変数(実名報道のネガティブ効果の容認,公正世界信念,許しの重視ならびに可変性に対する信念)から構成されるモデルを設定した。そして,このモデルを強制性交罪と器物損壊罪の2つの条件を用いて検討した。282名のデータ分析の結果,器物損壊罪で実名報道された特定少年に対しては,可変性を信じることでその受容にポジティブな影響があることが示された。また,強制性交罪と器物損壊罪のいずれにおいても,許しを重視することにより,実名報道が当該の特定少年にもたらすネガティブな効果が容認されないことが示された。これらから,可変性に対する信念および許しの重視が実名報道された特定少年に対するポジティブな態度を促進する可能性が示唆された。