実験社会心理学研究
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緊急事態における避難行動に関する実験的研究
事前の探索経験の効果
伊藤 君男天野 寛岡本 真一郎
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1998 年 38 巻 1 号 p. 17-27

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抄録

本研究の目的は, 緊急事態における避難行動に見られる事前の探索経験と集合行動の効果の検討である。実験室内に被災状況を模した迷路を作製し, 被験者の実際の脱出行動を観察した。実験では, 被験者は電気ショック装置を持った実験者から逃れるように教示された。実験1 (被験者64名) は, 2 (探索経験の有・無) ×2 (単独脱出・集団脱出) のデザインで行われた。探索経験は単独で行われ, その後, 単独または4人集団で実験が行われた。その結果, 探索経験は脱出所要時間の短縮を促進するという結果が得られた。また, 単独-未経験条件の被験者は他の条件の被験者と比較して, 脱出に要した時間を長く認知しているという結果が得られた。実験2 (被験者44名) では2種類の出口を設定し, 探索経験の際, 半数の被験者には一方の出口を, 別の半数の被験者にはもう一方の出口を学習させ, 本実験では4人集団で実験を行った。その結果, 集団脱出における同調行動が観察され, 集団による避難行動において, 不適切な行動であると考えられる同調行動の生起が示唆された。本研究の結果は, 探索経験の効果を証明し, ふだんの避難訓練の有益性を改めて示唆するものであった。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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