2005 年 28 巻 3 号 p. 217-226
本研究は,生物群集の種組成と環境条件の関係をモデル化するプログラムを利用し,生物の種組成と生育環境,あるいは人為的影響との関係を学習するための教材を開発することを目的とするものである.著者らのフィールド調査データの多変量解析により,河川産珪藻群集の種組成と環境条件を対応づけるモデルの開発を行った.並行して流域環境と水質を対応づけるモデルの開発を行い,これらを統合した環境学習のための教材"SimRiver"を提案する.教材利用者はモデル河川の環境条件を設定し,その条件下で予測される種組成に基づきコンピュータの画面上に描かれる珪藻の同定および計数を行って,その結果を用いて水質評価を仮想体験する.珪藻の同定作業は実際には繁雑だが,作業画面と連動した電子珪藻図鑑を用いて行えるように工夫されている.こうした教材の適切な利用法,あるいはその利用を組み込んだカリキュラムの検討が,今後の課題となろう.