日本教育工学会論文誌
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巻頭言
総説
  • 山森 光陽
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 543-551
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    ジャーナル フリー

    教育工学及び関連諸領域における時代的・社会的要請に対応した学術的研究の状況を総覧的に把握するために,2006年から2022年に日本教育工学会論文誌,教育学研究,教育心理学研究,教育方法学研究に掲載された論文の和文要約における用語の出現状況を分析した.その結果,(1) 時代的・社会的要請に対して教育工学と関連諸領域の両方で密接な関係を持ちながら,あるいは分担をしながら学術的な研究が進められてきたケース,(2) 時代的・社会的要請の変化を見通した研究が積み重ねられてきたケース,(3) 教育工学では時代的・社会的要請に応えた研究があるが関連諸領域では議論されていないケース,(4) 関連諸領域では時代的・社会的要請に応えた研究があるが教育工学では取り上げられていないケース,これら4つのケースが見られることが示された.そして,様々な時代的・社会的要請の各々が,どのケースに該当するのかを提示した.

展望
  • 森下 孟, 鶴田 利郎, 板垣 翔大, 今野 貴之, 倉田 伸, 寺嶋 浩介
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 553-565
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    ジャーナル フリー

    情報教育は日本教育工学会の主要な研究分野のひとつとして位置づいてきた.本論文では,情報教育の今後の研究課題を明確にするために,1)これまでの日本教育工学会における情報教育に関する研究動向の整理,2)情報活用能力に関する実態調査を行った.前者については,これまでの動向から特に情報モラル教育とプログラミング教育に焦点化し,分析をすることにより今後の課題を示した.後者については,先行研究に基づき項目を検討し,教員養成課程の大学生を対象とした調査を行うことにより,情報端末の使用開始時期と情報活用能力や,各項目の関連性などを検討した.これらの結果に基づき,情報教育研究に関する今後の課題を示した.

  • 稲垣 忠, 池尻 良平, 江木 啓訓, 瀬戸崎 典夫, 仲谷 佳恵, 根本 淳子, 三井 一希
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 567-578
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    ジャーナル フリー

    現代の初等中等教育では,学習環境に対する社会的ニーズ,技術環境が変化している.国内の学習環境に関する研究動向について,山内 (2020)の「空間」「人工物」「活動」「共同体」の4つの側面を手がかりにレビューを行った.まず,学習環境がどのような学問領域で研究対象とされているのかを調査した結果,日本教育工学会の論文がもっとも多く,「人工物」「活動」に着目していた.次に,日本教育工学会の論文のみを対象にレビューを行った結果,4つの側面の典型的な組み合わせとともに,「共同体」「空間」に関する研究が少ない状況にあることを検証した.これらの結果から,①知見が不足している領域に対するアプローチと,②蓄積されてきた知見を体系的にとらえる枠組みの構築の重要性を提言した.

  • 深見 俊崇, 森本 康彦, 泰山 裕, 山田 政寛, 大浦 弘樹, 益川 弘如
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 579-592
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    ジャーナル フリー

    デジタルトランスフォーメーション (DX) は,学習評価の世界においても技術革新をもたらすことが期待されている.この展望論文では,新たな学習評価研究の創出に向けて,①テクノロジの変化がもたらす評価方法の変化,②真正の評価がもたらした学習と評価の変化,③諸外国におけるコンピテンシー等の捉え方の変化,の3点に整理することを目指した.その結果,教育工学において学習評価研究を深めていくには,評価者の学習評価の見直し,それに合わせた評価方法の見直しと多様化,その多様化に対応しテクノロジの有効利用に関する研究の必要性が導かれた.これらの研究を創出していくことが,これまで以上の学習者の変容,学習環境デザインの変容の実現につながるだろう.

教育実践研究論文
  • 吉岡 学
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 593-601
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    ジャーナル フリー

    本研究では,重度知的障害 (知的発達症) のあるASD児1例に対して呈示方法のことなる学習場面において3軸加速度計を用いた身体リズム周波数を指標とし,その際の平均正反応率,平均実施時間,常同行動及び離席行動出現数の把握を試み,本指標の臨床応用の可能性について検討した.身体リズム周波数の帯域は3つ (0.0Hz以上1.0Hz未満,1.0Hz以上3.0Hz未満,3.0Hz以上5.0Hz未満) とした.その結果,平均正反応率は0.0Hz以上1.0Hz未満の帯域と関連性があり,常同行動出現数は1.0Hz以上3.0Hz未満の帯域と関連性があり,離席行動出現数は3.0Hz以上5.0Hz未満の帯域と関連性が示唆された.これにより身体リズム周波数を指標とした学習場面の評価方法として臨床応用の可能性が示唆された.

  • 岩﨑 千晶
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 603-617
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2023/09/04
    ジャーナル フリー

    研究の目的は,高等教育におけるライティングセンターの同期型オンラインチュータリングに関するチュータリング方略を明らかにすることである.調査の結果,チュータリング方略の手順として準備,導入,展開,まとめの4段階で構成される7つのステップが抽出され,対面と大きな差がないことが示された.チュータリング方略の構成要素としては「対面と異なる観察や質問を通して,学生のつまずきや理解度を把握しようとしている」「画面を通したセッション特有の良さと課題を認識し,対応方法を選択する」「システムトラブルに関して問題なく対応しようとしている」等,6つを導き出した.チューターは学生の視線やキーボードの入力音等,対面とは異なる方法で非言語的側面にも配慮しながら,学生の理解度やつまずきを把握し対応するといったオンラインチュータリングならではの方略をとっていることが示された.

  • 福島 貴子, 今井 亜湖
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 619-627
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,日本語指導が必要な児童が在籍学級の授業に参加できるようにするための学習支援教材「いみあわせかあど」を開発した.「いみあわせかあど」は,授業で教師がよく使用する語彙のうち,日本語指導が必要な児童が聞き取るのが難しい語彙を習得させることを目的としたカードゲーム型教材である.開発した「いみあわせかあど」を日本語指導が必要な児童67名に2週間使用してもらい,児童及び担当教師を対象とした評価を実施した.語彙の理解を確認するテストでは,事前テストと事後テストの平均に有意差は見られなかったものの,興味・意欲,使いやすさに関する質問紙調査の結果は,児童及び教師の9割以上が肯定的な評価であった.以上の結果より,本研究で開発した「いみあわせかあど」の教材としての有用性が示唆された.

  • 医療系学生の短期オンライン留学プログラムを事例に
    中村 絵里, 松本 暢平, 大西 好宣, 伊藤 彰一
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 629-638
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2023/12/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,主観的なコンピテンシー評価から留学成果を検討し,グローバル人材育成に寄与する効果的な留学プログラムの要件を明らかにすることである.大学生対象に質問紙調査を実施し,グローバル・コンピテンシーに関連する3つの構成因子「協働力」「主導力」「遂行力」を見いだした.次に「全員留学」を掲げる大学で短期オンライン留学プログラムを履修する医療系学生を対象に,留学前後に質問紙調査を実施し,留学後のコンピテンシー自己評価と留学中の活動との関連を相関分析により検討したところ,主観的評価の高さは,外国語によるコミュニケーション時間,発話時間,発信回数,発信のための準備時間と関連があることが示された.

資料
  • 松田 岳士, 近藤 伸彦, 岡田 有司, 重田 勝介, 渡辺 雄貴, 加藤 浩
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 4 号 p. 639-653
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2023/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,学生が自分自身のすべての学習状況を記録し可視化するシステムの試用版の実証評価を通して,自己主導学習レディネスがシステムの継続的な使用に与える影響を考察した.4大学の1年生から3年生が参加した実証評価における使用継続状況を決定木分析した結果から,自己主導学習レディネスの構成因子のうち,自己責任感が強く,自己効力感も高い学生の中に,外部からの介入がなくても長期間継続して使用する者の割合が高いことが示された.また,様々な状況で効果的な学習ができると考えている程度が高い学生ほどシステムを学習プランニングのツールとみなしておらず,学習記録のモニタリングシステムとして使用する傾向にあった.

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