本稿では,TPACKに関する海外文献から,その概念枠組みと近年の議論を整理した上で,実証データを扱った日本のTPACK研究をレビューし,研究の現状と今後の研究への示唆について検討することを目的とする.その結果,海外では,変容的な認識論や最新の技術や教育のトレンドを踏まえた新たな枠組みが示されていること,また,TPACKを測定するためのさまざまな手法や専門性開発の方法が考案されていること,が明らかになった.また,日本の研究を整理した結果,その多くはKOEHLER and MISHRAの7つの知識領域に基づく量的・質的な評価方法を用いており,TPACKの視点から教員養成や現職教育の成果も検討されてきていることが明らかになった.今後の研究への示唆として,より包括的な視点でTPACKを捉えた研究,専門性開発の研究の充実,技術の定義の明確化の3点を示した.