日本教育工学会論文誌
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論文
  • 田口 真奈, 高比良 美詠子, 稲葉 利江子, 辻 靖彦
    2025 年49 巻3 号 p. 449-462
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    本研究はコロナ禍発生前後の特殊な状況に着目し,大学教員の授業におけるICT利用行動と認識の影響関係を明らかにすることを目的とした.具体的には,2020年度のコロナ禍によるICTの強制的な利用がICT利用に対する認識をよりポジティブな方向に変化させたのか,また,その認識はその後のICTの継続的な利用に影響を及ぼしたのかを検討した.研究1では,2006年度と2019~2022年度のICT利用量を比較し,コロナ禍により大学教員のICT利用量が急増したことを確認した.研究2では,2019年度と2020年度に同一の授業科目を担当していた441名を対象に,ICTの利用行動が変わることで,ICT活用効力感が変わるという影響関係が存在する可能性を指摘した.研究3では,2020年度と2022年度に行われた縦断調査に回答した243名に対して交差遅れパネル分析を行い,コロナ禍1年目に形成されたICT利用に対する信念がポジティブであるほど,コロナ禍収束期においてICT利用量が多いことを明らかにした.

  • 中西 一雄, 藤島 俊幸, 西岡 和成
    2025 年49 巻3 号 p. 463-476
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,児童生徒主体の「新たな学び」を実現する上で,教師に求められるICT活用に関する資質能力を「ICT活用資質能力」とした上で,その現状把握や次の目標設定への示唆を提供する尺度を作成し,その妥当性と信頼性を検討することを目的とした.研究1では,現職教員を対象とした調査を通じて,「ICT活用に対する自己効力感」,「児童生徒主体のICT活用観」,「新規ツールへの好奇心」,「能動的・挑戦的に学ぶ姿勢」,「ICT活用への探究心」の5因子解28項目からなる「新たな学びを実現する教師のICT活用資質能力尺度」を作成した.研究2では,「ICT活用資質能力」とワーク・エンゲイジメントとの関連を検討し,「ICT活用資質能力」の向上が教職への適応感や教科指導のやりがいにつながる可能性を示した.最後に,学校現場における有用な活用に向け,作成した尺度の妥当性や因果関係に関する今後の課題について考察した.

  • 期待価値理論におけるコストの多次元性の観点から
    真鍋 一生, 中谷 素之
    2025 年49 巻3 号 p. 477-486
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/07/28
    ジャーナル フリー

    本研究は,学習に対して抱くコストが学習活動に与える影響について,期待価値理論におけるコストの多次元性に着目して検討した.対象者は中学生333名であり,コスト認知,達成目標,学習方略の使用について質問紙調査を実施した.データの分析の際,コストを1次元的にとらえるだけでなく,機会コスト・努力コスト・心理コストと多次元的にコストをとらえ,それぞれのコストが達成目標を媒介して,学習方略に与える影響を確認した.コストを1次元でとらえた場合,先行研究と同様に学習方略と負の関連がみられた.一方,多次元的にコストをとらえた場合,機会コストは学習方略と負の関連がみられたが,努力コストは学習方略と正の関連がみられた.また,心理コストは達成目標との正の関連がみられた.本研究の結果から,各次元のコストと達成目標,学習方略との関連は異なることが明らかになり,多次元のコスト認知が学習活動に与える影響を検討する意義が示唆された.

  • 山本 康裕, 宮﨑 康夫, 益岡 都萌, 山際 あゆみ, 田邊 彰洋, 津田 真吾, 山上 保, 津田 征治, 真尾 司, 清水 公明, 寺 ...
    2025 年49 巻3 号 p. 487-507
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/06/19
    ジャーナル フリー

    本研究は,潜在記憶研究の知見を基盤とし,効率的な英単語の知識習得を可能とするe-learningとして「マイクロステップ・スタディ (Microstep Study:MSS)」を取り上げ,高校生の英語力向上との関連を縦断調査によって評価することを目的とした.2021年の5月から2022年の10月までに計5回実施された実用英語技能検定 (英検) を受験した高校生を対象として,MSS学習量と英検得点との個人内および個人間関係を縦断データにマルチレベルモデルを適用することで検討した.その結果,MSS学習量と英検得点との間に正の個人内関係があることが示された.すなわち,個人内レベルにおいてMSSによる英単語学習を積み重ねていくことで,高校生の語彙力,ひいては英語力が効率的に向上する可能性が示唆された.

  • 平松 あい, 青木 えり, 花木 啓祐
    2025 年49 巻3 号 p. 509-526
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/14
    ジャーナル フリー

    小中学生の保護者へのアンケート調査により,コロナ禍での学校のオンライン授業に対する子どもの参加態度や家族への影響と子どもの特徴との関連を調べた.子どもの特徴に関わる項目について因子分析を行ったところ,「精神的自立・自律性」「集団志向性」「規律不適応・注意力欠如性」「気分安定性・協調性」「緊張・敏感性」の5因子が抽出され,因子得点に基づくクラスター分析によって子どもを6グループに類型化した.自律的行動がとれ協調性が高い場合は自分で学習を進めることができるが,内向的で緊張しがちな特性もある場合は自らの発言が難しいため参加への工夫が必要である.ある程度自律的行動がとれても規律に適応しにくく敏感な特性の場合は,対面よりむしろオンライン授業の方が個性に合った学習ができる可能性がある.自律的行動が難しく協調性や規律への適応が低い場合には,学習の遂行のために家族負担が増すことが推測される.

  • 批判的思考態度の補償効果に着目して
    工藤 日南子, 小野田 亮介
    2025 年49 巻3 号 p. 527-537
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    誤情報発信場面における発信者の罪悪感が対処行動の必要性評価といかに関連しているかについて,批判的思考態度の補償効果に着目して検証した.700名の参加者に対し,SNSでの誤情報発信を想定した仮想場面において,発信者としての罪悪感および対処行動の必要性に対する評価を求めた.変数間の関連を検証した結果,罪悪感および批判的思考態度は対処行動の必要性評価と正の関連にあることが示された.また,罪悪感と批判的思考態度の交互作用効果が認められ,罪悪感を低く評価した参加者において,批判的思考態度が対処行動の必要性評価を高める効果がより高いことが示された.したがって,批判的思考態度は罪悪感を補償する役割を担っており,たとえ罪悪感が低い場合であっても,批判的思考態度を高めることで誤情報発信に対する対処行動が促される可能性が示唆された.

  • 国語・算数の認知的能力と関連させて
    森本 洋介, 楠見 孝, 長澤 江美
    2025 年49 巻3 号 p. 539-555
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    メディア・リテラシー (以下ML) の効果測定に関する先行研究における内容は,尺度生成やその尺度の信頼性・妥当性の検討が中心であった.本研究では比較的先行研究の多い小学校高学年を対象とし,尺度ではなく能力の獲得を測定するためのテスト形式でのデータ収集および対象となる児童の一部に対する聞き取り調査を行ったうえで,認知領域とML教育の効果との関連性を検証する.結果として小学校高学年の児童に対するML教育の効果が,特に批判的思考力の育成に関して一定程度あったこと,そして国語や算数の認知的スキルとメディア・リテラシーの能力獲得との関係性が示唆された.今後の課題として,MLテストの信頼性の検証や難易度を明らかにした設問の開発,MLの批判的思考力が実験群の児童に対して長期的に維持されるのか,などといったものが考えられる.

  • 葛木 美紀, 田中 謙司
    2025 年49 巻3 号 p. 557-567
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,オンラインスクールに籍を置く生徒の休学・退学を予測し,事前に施策を実施するために,生徒に関する様々なデータを分析し,機械学習による退学予測を試みた.事前の生徒満足度調査の結果から,生徒間のコミュニケーションが十分に行えているかが,卒業・退学・休学など生徒の在籍情報に影響を与えることが確認されたため,生徒と教師間のオンライン会話データを活用し予測精度を向上させることができるか調査した.具体的には,生徒の基本属性,生徒の授業視聴データおよび学習教材の進捗データをSlackの会話データとともに機械学習にて分析し,SHAP Valueという値によって機械学習の予測結果に貢献している要素を特定する試みを行った.この結果,オンライン会話データを予測モデルに取り入れることで退学・休学者の中で実際に退学・休学する生徒の予測再現率を4%改善できることが確認された.

教育実践研究論文
  • 町 岳, 齋田 裕子
    2025 年49 巻3 号 p. 569-580
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校国語科の2つの物語単元で物語の主題を一文で表す一文読解方略指導を行い (実践1・2),児童の方略獲得過程や,それを教科書以外の物語 (実践3) で活用できるかを検証した.その結果,児童の読解方略活用に対する自己効力感 (分析1) は段階的に有意に向上した (p < .001).また物語の主題を表す一文の質の推移から (分析2),中心人物の変容前後の姿と要因を関連づけた一文で表す方略は獲得・維持されやすい反面,変容前後の姿と要因を掘り下げた一文で表す方略の獲得には習熟が必要である可能性が示された.児童の一文検討プロセス (分析3) からは,児童が様々な試行錯誤を繰り返しながら,児童相互の学びあいや教師からの足場かけにより,方略を獲得していく過程が発話事例として抽出された.

  • 美那川 雄一
    2025 年49 巻3 号 p. 581-594
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/08/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,ナラティブが歴史の想起と説明に及ぼすアフォーダンス (産出) と抑制について明らかにすることを目的に,高校生を対象として準実験の事前・事後テストデザインと質的調査による検証を行った.検証Ⅰでは,「盛者必衰」というスキーマとして機能するナラティブ・テンプレートを提示した実験群と統制群を比較し,ナラティブ・テンプレートが歴史の想起および説明を促すことを示した.検証Ⅱでは,歴史の想起と説明について,ナラティブ・テンプレートを提示した実験群に対して「帝国」という概念を提示した実験群を設けて比較した.その結果,歴史の想起については両群に差はみられなかったが,歴史の説明については前者の方が後者よりも促す効果がみられた.しかし,両群の歴史の説明内容や構成は酷似しており,「帝国」概念を「盛者必衰」のナラティブで意味づけしていることが示された.

資料
  • 中野 生子, 山本 良太, 山内 祐平
    2025 年49 巻3 号 p. 595-614
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,個人特性の異なる学習者がどのような協働活動を通じて,それぞれ異なる社会情動的スキルの学習をしたか,また参加者の異なる個人特性が絡み合うための協働活動はどのようなものかを,質的分析を通じて明らかにする.社会性と情動の学習として有効なUWC ISAK Japanのサマースクールに参加した4名を対象に,半構造化インタビューを実施し質的分析を行った.本研究の結果,個人特性が異なる参加者同士の協働活動によって,【気づきや受容を促す互恵的学習】【軽微な行動変容を促す順応的学習】【葛藤克服によるブレイクスルー】【不協和を通じた反省的学習】という異なる学習が起こり,これらの学習を支えた協働活動として【個人特性に基づく学習者の考え・行動の多様さを可視化し際立たせる協働活動】および【個人特性に基づく学習者の考え・行動・状況の違いのすり合わせを求められる協働活動】が有効であることが示唆された.

  • 木村 千夏
    2025 年49 巻3 号 p. 615-626
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,法科大学院の反転授業において予習動画の積極的な視聴に関わる要因を探索的に検討した.法学未修者コースの学生を対象としたアンケート調査とインタビュー調査によって,「深い学習アプローチ」「小テスト」「視覚と聴覚」「スライド」「自由視聴」「基礎知識」「判例の背景」「仕組み」「口頭試問」「期末試験」の10要因が見いだされた.これらは,いずれも授業デザインと関係していると考えられることから,反転授業において予習動画の視聴を促進するには,動画教材についての検討だけでなく,授業全体のデザインを総合的に検討する必要性が示唆された.また,法学教育特有の要因としては,学生は予習動画で「判例の背景」が説明されることにメリットを感じていること,「口頭試問」が予習動画の再視聴を促し,知識の内化と外化の往還の機会を増やしていることが確認された.

  • 藤崎 聖也
    2025 年49 巻3 号 p. 627-636
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/06
    [早期公開] 公開日: 2025/09/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,高等学校での歴史科目である「歴史総合」「日本史探究」「世界史探究」の教科書について,統計図表の使用状況を比較した.その結果,学習指導要領での統計やグラフに関する言及頻度に比例して,世界と日本の近現代史を学習する必修科目である「歴史総合」で最も多くの統計図表が用いられていることが確認された.「日本史探究」では,その「歴史総合」と重複する近現代の内容に統計図表が集中している.また,「日本史探究」「世界史探究」に比して,「歴史総合」は重複する統計図表が少ないこと,1件の折れ線グラフの本数が多いことから,科目固有のねらいを念頭に置いた教科書作成がなされていると考えられる.「金額」に関する図表は,3科目とも他科目との重複が過半数となっており,「歴史総合」をふまえた「日本史探究」あるいは「世界史探究」の学習展開を考える際に「金額」が1つの着眼点になり得ることを示唆している.

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