2006 年 29 巻 3 号 p. 181-185
E-learningは1990年代後半のドットコムの「興奮」から現在の「失望感」に取って代わった.その教訓はなんであろうか.簡単にいってしまえば,ドットコムの経験は2度と繰り返してはいけないことであろう.しかし,それとは別に,e-learningでなかなか成功できない理由には,いくつか基本的な問題があるのではなかろうか.このような問題はドットコムのような一時的な問題を超えた,e-learningに見られる特有な問題である.まずは,e-learningはソフトウェアであることである.ソフトウェアの開発は,ソフト誤動作や予算超過などの原因により,失敗の可能性が高い.次に,開発チームに必要な人材は,摩擦がおこり安いメンバーで構成される.ソフトウェアの専門家と美的価値にこだわるアーティストタイプ,両方必要であるが,この2つのタイプの人間は,コミュニケーションの上で困難することが多く,仕事が進まなくなる例をよく見る.最後に,e-learningのプログラムは普及させなければ意味がないが,普及に必要な予算などはe-learningの企画には普通つかず,いいものを作っても使われず消えていくことが多い.