2010 年 34 巻 3 号 p. 309-318
本論文では,河川のフィールド観察において動画コンテンツを導入した情報発信手法を提案し,被験者の観察行動の傾向を明らかにする研究を行なった.動画コンテンツは,洪水や水中の様子等の捉えにくい河川の現象を素材にして,携帯端末へ取り込みフィールドで視聴した.調査の結果,フィールド観察では,小スケールや大スケールの情報を被験者に提供する必要性が示された.また,動画コンテンツは,現象の変化を映像で示すことにより観察対象の比較がおこなわれること,また,変化の状態を把握することができるのでフィールドに残された痕跡から現象を遡った観察が行なわれることが示唆された.さらに,生物の生息場所を映像で具体的に指し示すことで観察が充実し,興味や関心を高めることが可能となった.その一方で,題材の選択や編集の方法によって,被験者の観察行動が既定されてしまう可能性も否定できないことが課題として残された.