抄録
本研究の目的は,生徒との相互行為の中で立ち現れる教師の実践知を会話分析の手法を応用して記述することである.データは関西圏の公立中学校1年生の教室で撮影した英語の授業20時間分であり,そのうち観察された1件の臨界事象に焦点をあてて分析を行った.その結果,教師はあるIRF連鎖の中で一人の生徒から予想外の誤答があった場合,1)生徒の反応に応じていくつかの質問の定式化手続きを用いることで,その生徒の質問に対する理解度を検証すること,2)他の生徒と別のIRF連鎖を構築することでその生徒のアフォーダンスとなる応答方法を示し,最終的にその生徒から正しい応答を引き出すことが明らかになった.このように記述された教師の実践知は,授業を生徒との相互行為と捉えるなかで明らかになったものである.結語では,このような会話分析を用いた教師の実践知記述の試みが今後の授業研究にどのように貢献し得るかを述べる.