2024 年 48 巻 4 号 p. 709-717
コロナ禍では,感染拡大防止を目的として多くの学校がオンライン授業を実施した.度重なる感染状況の悪化はGIGAスクール構想の実現を推進し,1人1台の端末環境は予定を繰り上げて整備された.一方,教育現場は状況の変化に対して応急的な措置を講じることに終始し,事前の計画に沿った教員研修や,その効果測定等を満足に行えない状態が続いた.本稿では,2020年4月~6月に東京都内の私立高校で実際に行われた,オンライン授業の実施に向けた研修等,その具体的経緯を報告する.これらの緊急対応は,原則として文部科学省から発出される通知・事務連絡等に沿うものであり,緊急事態宣言の発令を含む当該期間には必要性が高いものだった.今後も自然災害が発生した際には,子どもたちが長期間にわたり学習機会を失う可能性がある.学校教育を一刻も早く復旧させるためには,設備等の水準を向上させること,緊急業務の集中と分散を図ること,学校関係者の心理的安全性を確保することが求められる.