論文ID: 40051
本研究では,行為の中の省察を規定する要素として,教師の授業認知の特徴を明らかにすることを目的とする.方法として, CARTER et al.(1988)の写真スライド法を援用し,小学校社会科の授業に関する写真スライドを提示することで,小学校教師31名の認知内容を抽出した.授業において重要あるいは問題と考えられた場面に関して,注目箇所や意味形成を調査した結果,教職経験年数の多い教師群ほど,⑴特定の対象に注目するようになり,特に児童の情動を読み取る上で精度の高い情報源に注目する傾向があること,⑵以前の場面と関連付けながら授業を捉える傾向があること,⑶指導案から予測される児童の反応に基づいて授業を捉える傾向があること,の3点が明らかになった.しかし,生み出される状況の意味については教職経験に関わらず多様であり,教職経験とは異なる視点から検討する必要性が示唆された.以上を踏まえ,授業認知に基づく今後の省察研究への示唆を提示した.