本研究では,ナラティブが歴史の想起と説明に及ぼすアフォーダンス (産出) と抑制について明らかにすることを目的に,高校生を対象として準実験の事前・事後テストデザインと質的調査による検証を行った.検証Ⅰでは,「盛者必衰」というスキーマとして機能するナラティブ・テンプレートを提示した実験群と統制群を比較し,ナラティブ・テンプレートが歴史の想起および説明を促すことを示した.検証Ⅱでは,歴史の想起と説明について,ナラティブ・テンプレートを提示した実験群に対して「帝国」という概念を提示した実験群を設けて比較した.その結果,歴史の想起については両群に差はみられなかったが,歴史の説明については前者の方が後者よりも促す効果がみられた.しかし,両群の歴史の説明内容や構成は酷似しており,「帝国」概念を「盛者必衰」のナラティブで意味づけしていることが示された.