論文ID: 49035
高等学校の教員が,授業を通じて生徒の資質・能力がどれくらい高まっていると認識しているかを調査した.本研究では,高等学校で導入された「総合的な探究の時間」(以下,単に探究学習とも表記)と,近年広まりつつある「授業でのICT活用」の2つの要因に着目し,大学進学率で分類した学校タイプを考慮した分析を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.第一に,学校タイプに関係なく,多くの生徒が問いを立てて情報を収集し,まとめ・発表を行う一連の探究プロセスに取り組むほど,また,生徒と教員が授業で多様なICT活用を行うほど,教員は生徒の資質・能力の向上を実感する傾向がある.第二に,生徒の資質・能力の種類別にみても,探究プロセスに取り組む生徒が多いほど,教員はその向上を認識している.第三に,授業での教員によるICT活用は,生徒の資質・能力が高まっているという実感に関連がない一方,生徒が関与する多様なICT活用の頻度が高いほど,教員は生徒の資質・能力の向上を実感する.探究学習の効果の一部は,授業でのICT活用の効果に吸収されることから,探究学習とICT活用が相互に関連し,生徒の資質・能力向上に対する教員の認識に正の効果をもつ可能性がある.