森林立地
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ボリビア熱帯雨林産2樹種の実生稚樹の成長と光合成に及ぼす光および養分の影響
ナガシロ-カンダ テレサ-ナミコ中尾 登志雄伊藤 哲野上 寛五郎
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1999 年 41 巻 2 号 p. 83-91

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抄録
ボリビアの熱帯雨林に生育するSwietenia macrophyllaおよびSchizolobium parahybumの成長および光合成に対する光環境および養分環境の効果を明らかにするため,両種の実生稚樹を5段階の光環境および3段階の養分環境下で約150日間生育させ,成長および光合成特性を調査した。両方の種で,養分環境よりも光環境の違いの方が成長および光合成特性に影響を及ぼしており,光環境がより重要な因子であると推察された。養分環境の違いは成長のみに対して効果が認められ,S. macrophyllaは高養分環境下で最も成長が良かったが,マメ科のS. parahybumは中庸の養分環境下で最も高い成長速度が観察された。両種の成長にとって36%から60%の相対照度が最適であり,全光下では成長が抑制されていた。S. parahybumは相対照度5%を除く光環境ではS. macrophyllaよりも樹高成長が速かったが,相対照度5%区では全ての個体が枯死した。S. macrophyllaでは見かけの光量子収率が被陰下で増加していたが,S. parahybumでは光量子収率の変化は認められなかった。また,S. macrophyllaでは最大光合成速度と成長速度に相関が見られたが,S. parahybumでは認められなかった。以上のことから,S. macrophyllaはS. parahybumよりも高い耐陰性を有し,これには光合成特性の可塑性が寄与していると推察された。また,光合成能力に種間の差はほとんど認められなかった。すなわち,種間の成長速度の違いは,単葉レベルの光合成特性という生理的な違いよりも,物質分配など個体レベルの生育特性を反映していると考えられた。
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© 1999 森林立地学会
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