1995年秋,宮崎県南部のスギ林に枯損が発生し,枯損実面積は41ヘクタール,枯損推定本数は8万本に達した。原因として当該年夏期の無降水状態が考えられたが,被害木にはしばしば暗色枝枯病の病徴が見られた。同期の平均風速,気温とも平年の値より大きかった。被害は宮崎層群南部地域に限られ,隣接する日南層群では少なかった。日南層群の地形は起伏が緩やかで,山頂部や尾根筋に平坦面も見られ,黒色土が堆積している。宮崎層群は急斜面で谷密度が高く,浸食が激しい。宮崎層群では土壌が礫土化しており,有効土層は日南層群より小さい。また,宮崎層北部の無被害地帯と,南部被害地帯との間には地形の違いはなかった。地形図の解析結果と被害分布の間には関係が認められ,被害は斜面の一定方向に発生が多く,尾根にも多発していた。被害発生とその他の地形要因などの関係から,今回の被害は海からの風の吹き込みの影響が大きいと推察した。土壌試料を採取時重量と飽水時重量の差で比較すると,被害区は無被害区よりもA層,B層ともにその差が小さい傾向にあり,最大容水量の違いが考えられた。透水指数は被害区のA層が大きく,無被害区は小さい傾向にあった。しかし,B層では著しい差はなかった。また,最小容気量は被害区の方がやや大きい傾向にあった。以上の結果から,干害は長期にわたる無降水状態の継続の他に,土壌母材や山地地形,土壌の物理性,樹体や地表からの水分消失条件,スギの暗色枝枯病に対する感受性の差異などが複合的に組み合わさって発生することが推測された。
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