森林立地
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41 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 戸田 浩人, 生原 喜久雄
    原稿種別: 論文
    1999 年41 巻2 号 p. 59-66
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林立地(巻),(59〜66),(年)。関東地方の森林土壌における窒素無機化をビン培養法で測定し反応速度論によって解析することで,可分解性窒素量(N_0),反応速度定数(k),見かけの活性化エネルギー(Ea)という3つの窒素無機化特性値を求めた。これらの特性値と土壌の化学性および可分解性炭素量(C_0)との関係を調査した。土壌採取は,群馬県のスギ林(Cryptomeria japonica)とヒノキ林(Chamaecyparis obtusa)を3ヶ所ずつ,落葉広葉樹林を1ヶ所,千葉県の常緑広葉樹林を2ヶ所(マテバシイ林(Lithocarpus edulis)とスダジイ林(Castanopsis cuspidata var. sieboldii)),それぞれ深さ0〜5, 5〜10cm(もしくは0〜10cm)および10〜20cmよりおこなった。全土壌試料においては,C/N比と窒素無機化特性値の間に相関性がなかった。しかし,C/N比≧20の土壌では,C/N比の小さいほど,N_0が大きくEaが小さくなった。C_0とN_0に正の相関性があり,回帰直線はC_0/N_0≒20となった。全炭素量に対するC_0の割合(C_0/C(%))が7〜8%で,kは最大,Eaは最小であった。C_0/C<7〜8%では微生物による窒素無機化に有効な易分解性炭素が不足で,C_0/C>7〜8%では易分解性炭素が多く炭素の有機化が生じると推察される。以上のように,森林土壌中の炭素の特性は,林木の利用可能な窒素の動態を把握する上で重要と考えられる。
  • 劉 発茂, 生原 喜久雄
    原稿種別: 論文
    1999 年41 巻2 号 p. 67-76
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    中国で実施されている皆伐・火入れ地拵えが地力に及ぼす影響を明らかにするために,中国福建省の馬尾松人工林の斜面の上,中,下部に皆伐前および皆伐・火入れ後2年間の土壌の理化学的性質の経時変化を調査した。皆伐・火入れの地の月平均地表面温度は皆伐を行わなかった馬尾松林地よりも7月で3.0℃,8月で5.9℃高かった。雨量の少ない11月〜1月には,皆伐・火入れ地の表層土壌のpFは3.7〜4.2となり,馬尾松林地より明らかに高かった。また,0〜20cm層での毛管水量は馬尾松林地の10〜30%と非常に少なかった。表層土壌のpHは火入れ2週間後に約1上昇したが,1年目で低下し,2年後は皆伐前のpHよりやや下回った。火入れ後に増加した土壌中の無機態Nおよび塩基は1年目で急激に減少し,2年後にはほとんど消失した。皆伐・火入れ後の2年間で消失した総N量(皆伐で残された有機物に含まれるN量と土壌中のNの損失量の和)は斜面上部で417kg・ha^<-1>,斜面中部で619kg・ha^<-1>,斜面下部で694kg・ha^<-1>と推定された。短伐期で火入れ地拵えを繰り返した場合,土壌の物理的性質の悪化および養分損失,特にNの欠乏が生じると推定された。
  • 丹下 健, 田村 邦子, 古田 公人
    原稿種別: 論文
    1999 年41 巻2 号 p. 77-81
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    土壌酸性化が樹木に与える影響を明らかにすることを目的に,硫酸水散布による土壌酸性化の初期段階におけるクロマツ苗の生育を調べた。外生菌根菌に自然感染しているクロマツ苗を,有機物に乏しい土壌をつめた鉢に植栽し,酸性水散布の有無と摘葉(すべての1年生葉を除去)の有無を組み合わせた4処理区を設けた。酸性水を散布した処理区の表層土壌のpHは,6から5に低下したが,下層土壌のpHはほとんど低下しなかった。酸性水を散布した処理区の土壌水には,対照区より高濃度の塩基が含まれていた。いずれの処理区でも土壌水中のマンガンとアルミニウムの濃度は非常に低かった。クロマツ苗の当年葉の養分濃度に処理区間で有意な差はなかった。クロマツ苗の成長量は,対照区と比較して摘葉した処理区で小さく,酸性水を散布した処理区で大きかった。摘葉は,菌根菌への光合成産物の供給量の減少をもたらす要因であるが,土壌酸性化に対するクロマツ苗の反応への影響はみられなかった。菌根の形成率には処理区間で差がなかったが,酸性水の散布によってクロトマヤタケの子実体発生量が有意に減少した。クロマツ苗が影響を受けないような土壌酸性化の初期段階で,菌根菌に影響が表れることが明らかになった。
  • ナガシロ-カンダ テレサ-ナミコ, 中尾 登志雄, 伊藤 哲, 野上 寛五郎
    原稿種別: 論文
    1999 年41 巻2 号 p. 83-91
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ボリビアの熱帯雨林に生育するSwietenia macrophyllaおよびSchizolobium parahybumの成長および光合成に対する光環境および養分環境の効果を明らかにするため,両種の実生稚樹を5段階の光環境および3段階の養分環境下で約150日間生育させ,成長および光合成特性を調査した。両方の種で,養分環境よりも光環境の違いの方が成長および光合成特性に影響を及ぼしており,光環境がより重要な因子であると推察された。養分環境の違いは成長のみに対して効果が認められ,S. macrophyllaは高養分環境下で最も成長が良かったが,マメ科のS. parahybumは中庸の養分環境下で最も高い成長速度が観察された。両種の成長にとって36%から60%の相対照度が最適であり,全光下では成長が抑制されていた。S. parahybumは相対照度5%を除く光環境ではS. macrophyllaよりも樹高成長が速かったが,相対照度5%区では全ての個体が枯死した。S. macrophyllaでは見かけの光量子収率が被陰下で増加していたが,S. parahybumでは光量子収率の変化は認められなかった。また,S. macrophyllaでは最大光合成速度と成長速度に相関が見られたが,S. parahybumでは認められなかった。以上のことから,S. macrophyllaはS. parahybumよりも高い耐陰性を有し,これには光合成特性の可塑性が寄与していると推察された。また,光合成能力に種間の差はほとんど認められなかった。すなわち,種間の成長速度の違いは,単葉レベルの光合成特性という生理的な違いよりも,物質分配など個体レベルの生育特性を反映していると考えられた。
  • 西村 五月, 讃井 孝義
    原稿種別: 論文
    1999 年41 巻2 号 p. 93-102
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    1995年秋,宮崎県南部のスギ林に枯損が発生し,枯損実面積は41ヘクタール,枯損推定本数は8万本に達した。原因として当該年夏期の無降水状態が考えられたが,被害木にはしばしば暗色枝枯病の病徴が見られた。同期の平均風速,気温とも平年の値より大きかった。被害は宮崎層群南部地域に限られ,隣接する日南層群では少なかった。日南層群の地形は起伏が緩やかで,山頂部や尾根筋に平坦面も見られ,黒色土が堆積している。宮崎層群は急斜面で谷密度が高く,浸食が激しい。宮崎層群では土壌が礫土化しており,有効土層は日南層群より小さい。また,宮崎層北部の無被害地帯と,南部被害地帯との間には地形の違いはなかった。地形図の解析結果と被害分布の間には関係が認められ,被害は斜面の一定方向に発生が多く,尾根にも多発していた。被害発生とその他の地形要因などの関係から,今回の被害は海からの風の吹き込みの影響が大きいと推察した。土壌試料を採取時重量と飽水時重量の差で比較すると,被害区は無被害区よりもA層,B層ともにその差が小さい傾向にあり,最大容水量の違いが考えられた。透水指数は被害区のA層が大きく,無被害区は小さい傾向にあった。しかし,B層では著しい差はなかった。また,最小容気量は被害区の方がやや大きい傾向にあった。以上の結果から,干害は長期にわたる無降水状態の継続の他に,土壌母材や山地地形,土壌の物理性,樹体や地表からの水分消失条件,スギの暗色枝枯病に対する感受性の差異などが複合的に組み合わさって発生することが推測された。
  • 平井 敬三
    原稿種別: 報告
    1999 年41 巻2 号 p. 103-111
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 松本 陽介, 田中 格, 小菅 進吉, 丹原 哲夫, 上村 章, 重永 英年, 石田 厚, 奥田 史郎, 丸山 温, 森川 靖
    原稿種別: 報告
    1999 年41 巻2 号 p. 113-121
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    わが国の温帯性広葉樹のガス交換特性を明らかにするために,よく整備・管理された森林総合研究所の樹木園に生育する41樹種の当年生陽葉について,最大純光合成速度(Pn_<max>),最大水蒸気拡散コンダクタンス(Gw_<max>),および水利用効率(WUE,Pn_<max>/Gw_<max>)を比較した。さらに,Pn_<max>とGw_<max>を用いた各樹種の水分要求度判定を行い,経験的に知られている各樹種の水分要求度との比較を試みた。その結果,Pn_<max>は,41樹種全体で9〜21μmolCO_2m^<-2>s^<-1>の範囲であった。常緑性広葉樹と落葉性広葉樹のPn_<max>を比較した結果,両者に大きな違いは認められなかった。Gw_<max>は50〜900mmolH_2Om^<-2>s^<-1>の範囲で,常緑広葉樹に比べ落葉広葉樹で高いGw_<max>の値を示す樹種が比較的多かった。また,WUEは,10〜90×10^<-6>molCO_2molH_2O^<-1>の範囲で,落葉広葉樹は常緑広葉樹に比べWUEの低い樹種が比較的多かった。Pn_<max>およびGw_<max>の関係から得られる各樹種の水分要求度判定指標では,41樹種中21樹種で生態学的な経験で知られている乾湿分布の知見とほぼ同じであったが,残りの20樹種では異なった。種の生態的分布を生理的特性から説明するためには,土壌養・水分,大気湿度,光,温度などの環境要因とガス交換速度の関係に対する数量的な解析が必要である。
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