森林立地
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礫床河川の河畔林としてのコナラ林 : その立地と種組成について
吉川 正人野田 浩平中 晴朗福嶋 司
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2007 年 49 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

本州中部の礫床河川氾濫原には,コナラが優占する落葉広葉樹林がみられる。本研究では,栃木県の蛇尾川と大谷川,山梨県の小武川の3河川を対象に植生調査と表層堆積物の調査をおこない,氾濫原に成立するコナラ林の立地と種組成の特性を明らかにした。氾濫原のコナラ林の立地は,河床礫の上に砂質の細粒土砂が薄く堆積した,土壌の未発達な場所であり,河川の増水による氾濫堆積物上であることが明らかであった。コナラ以外にもクリ,ケヤキ,シデ類,サクラ類,カエデ類,アカマツ,モミなど多数の樹種が混生していた。また,林床にササが密生することはまれであった。氾濫原以外の周辺地域に成立しているコナラ二次林と比較すると,種組成は大きく異なっていた。特に,林冠にケヤキをまじえ,渓谷林構成種を多く含むこと,二次林に一般的なツツジ科植物の多くが欠落し,草原性の植物も少ないことなどから,二次林とは明瞭に区別された。また,気候的にはいずれもWI=85℃・月前後,CI=-10℃・月未満の中間温帯林の分布域に位置していた。以上のような特性から,今回の調査地域にみられた氾濫原のコナラ林は,農用林として維持されてきたコナラ二次林とは由来,種組成とも大きく異なる森林群落であり,本州中部の低標高域の礫床河川における河畔林の一型とみなすことができた。

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© 2007 森林立地学会
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