森林立地
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森林土壌の現地窒素無機化における下層土および季節別の寄与
平井 敬三野口 享太郎溝口 岳男金子 真司高橋 正通
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2007 年 49 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

森林土壌の現地窒素無機化速度をレジンコア法により,深さ別および季節別に測定し,全窒素無機化量や年間の窒素無機化量に占める20cm深以下の下層土や冬季の割合を評価した。対象は北関東地方の低山帯における同一流域の異なる斜面位置に分布するスギ林および広葉樹林土壌である。窒素無機化速度は斜面下部の土壌で最も大きく,斜面上部ほど小さくなった。また,窒素無機化速度は積算地温と正の相関がみられた。50cm深までの年間の窒素無機化量は斜面中部で176.6kgN ha^<-1>yr^<-1>と最も多く,窒素無機化速度が大きな斜面下部の窒素無機化量は124.6kgN ha^<-1>yr^<-1>と少なかった。深さ50cmまでの窒素無機化量に対する20cm以下の下層土の割合は,斜面下部で41%,斜面中部で30%,斜面上部で43%であった。窒素無機化量は温度の高い夏季の5〜8月に多く,年間窒素無機化量の31〜45%を占めた。しかし,10〜2月の冬期にも年間窒素無機化量の10〜32%が無機化されていることが明らかになった。樹木等による窒素吸収の少ない冬季に生成する無機態窒素は系外へ流出する可能性がある。一方で,冬季に降雨が少ない地域では春まで土壌に残存し,成長開始期の窒素供給源になることも考えられる。本研究および既存の結果から,今後,立地条件の異なる土壌において窒素循環における下層土の役割や冬季の無機態窒素の動態をより詳細に研究する必要性が指摘される。

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© 2007 森林立地学会
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