森林立地
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南アルプス静岡地域における天然生林のニホンジカCervus nipponによる被害の事例報告
門脇 正史遠藤 好和井波 明宏滝浪 明
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2007 年 49 巻 1 号 p. 73-78

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抄録

2000〜2002年に南アルプスの静岡側における天然生林で,ニホンジカによる樹木への被害調査を行った。2つの調査区(20m×30m)における調査樹木121個体のうち,ダケカンバ51個体,オオイタヤメイゲツ32個体,ミヤマアオダモ20個体,ナナカマド10個体が全体の約93%を占めていた。3年間のシカの食害によるナナカマドの被害率は90%の9個体であったが,他の樹種では食害が観察されなかった。角磨ぎの被害率は,ナナカマドで90%の9個体と最も多く,次いで,オオイタヤメイゲツ34.4%の11個体,ミヤマアオダモ30%の6個体,ダケカンバ5.9%の3個体の順であった。この4樹種間で食害および角磨ぎ被害率に有意差があった。また,これらの樹種間の胸高直径に有意差がなく胸高直径階級も重複していたので,被害が樹種間の胸高直径の太さに起因していないと考えられた。食害および角磨ぎの両方がナナカマドで最も多く観察されたことより,シカがこの種を選択することが示唆された。

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© 2007 森林立地学会
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