森林立地
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フィリピンラモン湾のマングローブ二次林および養殖放棄地の植生と立地の関係
豊田 貴樹Ruben C. Mabesa谷口 敏彦戸田 浩人生原 喜久雄
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2007 年 49 巻 1 号 p. 61-71

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抄録

フィリピンのルソン島中部に位置するラモン湾ラガイ地区において,17年前に放棄された養殖池と22年前に養殖池建設のため伐採された後に放棄された場所(養殖放棄地という)と,隣接するマングローブ二次林において樹種分布,冠水状況,土壌基質の全Na濃度及び地表水の全塩分濃度及び酸化還元電位を調査した。二次林におけるマングローブ樹種の出現と冠水状況の関係から,1ヶ月間の冠水日数および連続非冠水日数を指標とした各樹種の適正生育範囲が示された。最も海側で優占して出現したRhizophora apiculata(Ra)の冠水/連続非冠水日数は,24〜21日/3〜4日,Ceriops tagal(Ct)は22〜17日/4〜7日,Lumnitzera littorea・Scyphiphora hydrophyllacea(Ll・Sh)は21〜13日/5〜9日,Avicennia officinalis(Ao)は13〜9日/9〜16日,最も陸側に出現したHeritiera littoralis・Intsia retusa etc.(Hl・Ir)は9〜0日/16〜30日であった。また養殖放棄地において冠水/連続非冠水日数が30日/0日の場所ではマングローブの出現がみられなかったことから,このような場所ではマングローブが自然に回復することが難しいものと判断された。また二次林では,海水の冠水頻度の違いが海から陸にかけての土壌基質中の全Na濃度と地表水の全塩分濃度及び酸化還元電位の変化となって発現し,マングローブ樹種の出現範囲にも影響を及ぼしていることが明らかとなった。他方,養殖放棄地では土壌基質のNa濃度や酸化還元電位で未だに撹乱の影響が見られることがわかった。

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© 2007 森林立地学会
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